第6話〜青い悪魔バージル〜
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真っ黒な海の中をぷかぷかと浮かんでいるような感覚だった。
ぼんやりとした頭で、うっすらと瞼を開いた時だった。
「―――ダンテ」
マヤの呼ぶ声がした。
心の中で名前を呟けば、波紋を広げながら彼女が目の前に現れる。
「不安なの……。お願い、傍にいて……」
白くて細い、少しの力だけで折れてしまいそうな手を差し出され、ダンテは『勿論だ』と腕を伸ばした。
けれどもその手は何故か振り払われる。
「私はダンテを呼んだの。あなたなんかじゃない」
何を言っている?
自分はダンテだ。
ダンテ以外の何物でもない。
「私が知ってるダンテは、そんな悍ましい姿をしてない」
戸惑いつつもう一度腕を伸ばせば、今度はマヤの姿はとぷんと闇に消えた。
「怖いから近づかないで」
「やっぱりダンテも悪魔なんだね」
「来ないで」
「傍にいるのも嫌」
姿なきマヤの抑揚のない声が、四方八方から非難してくる。
「マヤッ!!」
堪らずダンテが叫ぶ。
するとまた目の前に彼女が現れた。
「今のあなた……自分がどんな姿をしてるか分かってるの?」
ぐにゃりとマヤの姿がひしゃげると、鏡のように自分と同じ動きをする赤い悪魔の形が出来上がる。
「!?」
「そう。それがダンテの本当の姿だよ。醜い醜い、ダンテの本性……」
再びマヤは囂々と呪詛の言葉を吐き捨てる。
「……嘘だ!!アイツが……マヤがそんな事を言う訳ねぇ!!」
振り払うようにダンテが怒鳴ると、数々の声が途端に消えた。
一瞬の静寂の後、また声がする。
今度はマヤの声ではなかった。
「力なくては何も守れない」
バージルの声だった。
「自分の身も……守りたいものもな」
敗北を喫した時、兄に言われた言葉がダンテの体内を掻き乱す。
(俺の……守りたいもの……?)
もう自分に守るようなものなんて……と、薄ら笑いを浮かべると、別の方向から聞き慣れた声が駆けてくる。
「ダンテ!助けて……ダンテッ!!」
黒い闇に飲み込まれそうになるマヤの姿が視界に飛び込んだ。
「私っ……信じてるから……!!」
目にたくさんの涙を溜めてマヤの姿は、そのまま深い闇の中に消え去る。
「マヤッ……!!」
拳を握った時、彼は覚醒した。
頬を始めとする全身が嫌に冷たい。
まだ残る痛みを堪えて立ち上がるダンテは、いつの間にか切られていた右腕の袖を破り捨てると、淋しげに転がっていた愛刀に手を伸ばす。
まだ本調子とは言えない足取りでゆっくりと歩き、ある場所に立つと静止した。
そこはバージルとアーカム、そしてマヤが飛び降りた屋上の縁。
見下ろしても人影はなく、街の明かりが虚しく点っているだけ。
『お前の力にも興味がある』
『その女は?』
『連れて行く』
周りで交わされていた会話が嫌みたらしく頭に甦る。
(俺は……何も出来なかった……!!)
兄の言うように、自分の身も守れず、ましてや守りたいと願っていたマヤさえも。
マヤの笑顔を恐怖する顔に変えてしまったのも自分だ。
「っ……くそっ!!」
脇にあった石像に、己への悔しさと苛立ちをぶつけた。
すると電気が走るような衝撃が石像を伝い、間を空けて粉々に砕けた。
「……!?」
崩れた像を見上げ、そのまま視線を自分の手に向けた。
覚醒した、自分の悪魔の血。
姿も能力も変えてしまう、もう1人の自分。
(この力があれば……)
───マヤを助けられる。
でも、彼女は自分を見てどんな顔をしていた?
「マヤ……」
呪文のように名前を呟くと、彼女が去り際に言った一言が繰り返された。
『ダンテ、信じてるから……!!』
きっと助けに来てくれると。
きっといつものダンテに戻ると。
たくさんの信頼が込められた言の葉に、ダンテはいつぶりかの微笑みを浮かべて豪快に塔から飛び降りた。
空気を切ってダンテは進む。
体は軽く、今までにない高揚を感じる。
無数のブラッドゴイルが迫って来ても、今のダンテには何の問題もない。
銃撃に斬撃も織り交ぜ、時にはブラッドゴイルを踏みつけたりして軽くあしらう。
ただダンテは塔を駆け降りた。
「そろそろフィニッシュだ」
リベリオンを全力で投げ、残りの悪魔達を串刺しにすると、その剣に銃弾を放つ。
見事柄に命中すると、勢いをつけられた剣は悪魔を貫きながら地上目指して飛んだ。
加速するリベリオンは赤くなり、まるで大気圏に突入でもしているかのようだ。
でもそれよりも速く駆ける赤がいた。
剣と同じように空気を熱しながら走るダンテは腕を伸ばしてリベリオンを掴む。
そして掴んだと同時に、足で塔を蹴り飛ばした。
着地の事なんて考えず、ただこの高揚感に酔っていたかった。
コートのはためく音を耳に、ダンテは笑顔を浮かべる。
―――が、まさかの展開になった。
高まったダンテの悪魔の血の匂いを感じてか、塔の周りを泳いでいた巨大な悪魔が真横に迫る。
ダンテが『まさか』と思う前に、巨大悪魔は街を一飲みに出来そうな大きな口を開けてダンテを、自身の体内に文字通り飲み込んだ。
ぼんやりとした頭で、うっすらと瞼を開いた時だった。
「―――ダンテ」
マヤの呼ぶ声がした。
心の中で名前を呟けば、波紋を広げながら彼女が目の前に現れる。
「不安なの……。お願い、傍にいて……」
白くて細い、少しの力だけで折れてしまいそうな手を差し出され、ダンテは『勿論だ』と腕を伸ばした。
けれどもその手は何故か振り払われる。
「私はダンテを呼んだの。あなたなんかじゃない」
何を言っている?
自分はダンテだ。
ダンテ以外の何物でもない。
「私が知ってるダンテは、そんな悍ましい姿をしてない」
戸惑いつつもう一度腕を伸ばせば、今度はマヤの姿はとぷんと闇に消えた。
「怖いから近づかないで」
「やっぱりダンテも悪魔なんだね」
「来ないで」
「傍にいるのも嫌」
姿なきマヤの抑揚のない声が、四方八方から非難してくる。
「マヤッ!!」
堪らずダンテが叫ぶ。
するとまた目の前に彼女が現れた。
「今のあなた……自分がどんな姿をしてるか分かってるの?」
ぐにゃりとマヤの姿がひしゃげると、鏡のように自分と同じ動きをする赤い悪魔の形が出来上がる。
「!?」
「そう。それがダンテの本当の姿だよ。醜い醜い、ダンテの本性……」
再びマヤは囂々と呪詛の言葉を吐き捨てる。
「……嘘だ!!アイツが……マヤがそんな事を言う訳ねぇ!!」
振り払うようにダンテが怒鳴ると、数々の声が途端に消えた。
一瞬の静寂の後、また声がする。
今度はマヤの声ではなかった。
「力なくては何も守れない」
バージルの声だった。
「自分の身も……守りたいものもな」
敗北を喫した時、兄に言われた言葉がダンテの体内を掻き乱す。
(俺の……守りたいもの……?)
もう自分に守るようなものなんて……と、薄ら笑いを浮かべると、別の方向から聞き慣れた声が駆けてくる。
「ダンテ!助けて……ダンテッ!!」
黒い闇に飲み込まれそうになるマヤの姿が視界に飛び込んだ。
「私っ……信じてるから……!!」
目にたくさんの涙を溜めてマヤの姿は、そのまま深い闇の中に消え去る。
「マヤッ……!!」
拳を握った時、彼は覚醒した。
頬を始めとする全身が嫌に冷たい。
まだ残る痛みを堪えて立ち上がるダンテは、いつの間にか切られていた右腕の袖を破り捨てると、淋しげに転がっていた愛刀に手を伸ばす。
まだ本調子とは言えない足取りでゆっくりと歩き、ある場所に立つと静止した。
そこはバージルとアーカム、そしてマヤが飛び降りた屋上の縁。
見下ろしても人影はなく、街の明かりが虚しく点っているだけ。
『お前の力にも興味がある』
『その女は?』
『連れて行く』
周りで交わされていた会話が嫌みたらしく頭に甦る。
(俺は……何も出来なかった……!!)
兄の言うように、自分の身も守れず、ましてや守りたいと願っていたマヤさえも。
マヤの笑顔を恐怖する顔に変えてしまったのも自分だ。
「っ……くそっ!!」
脇にあった石像に、己への悔しさと苛立ちをぶつけた。
すると電気が走るような衝撃が石像を伝い、間を空けて粉々に砕けた。
「……!?」
崩れた像を見上げ、そのまま視線を自分の手に向けた。
覚醒した、自分の悪魔の血。
姿も能力も変えてしまう、もう1人の自分。
(この力があれば……)
───マヤを助けられる。
でも、彼女は自分を見てどんな顔をしていた?
「マヤ……」
呪文のように名前を呟くと、彼女が去り際に言った一言が繰り返された。
『ダンテ、信じてるから……!!』
きっと助けに来てくれると。
きっといつものダンテに戻ると。
たくさんの信頼が込められた言の葉に、ダンテはいつぶりかの微笑みを浮かべて豪快に塔から飛び降りた。
空気を切ってダンテは進む。
体は軽く、今までにない高揚を感じる。
無数のブラッドゴイルが迫って来ても、今のダンテには何の問題もない。
銃撃に斬撃も織り交ぜ、時にはブラッドゴイルを踏みつけたりして軽くあしらう。
ただダンテは塔を駆け降りた。
「そろそろフィニッシュだ」
リベリオンを全力で投げ、残りの悪魔達を串刺しにすると、その剣に銃弾を放つ。
見事柄に命中すると、勢いをつけられた剣は悪魔を貫きながら地上目指して飛んだ。
加速するリベリオンは赤くなり、まるで大気圏に突入でもしているかのようだ。
でもそれよりも速く駆ける赤がいた。
剣と同じように空気を熱しながら走るダンテは腕を伸ばしてリベリオンを掴む。
そして掴んだと同時に、足で塔を蹴り飛ばした。
着地の事なんて考えず、ただこの高揚感に酔っていたかった。
コートのはためく音を耳に、ダンテは笑顔を浮かべる。
―――が、まさかの展開になった。
高まったダンテの悪魔の血の匂いを感じてか、塔の周りを泳いでいた巨大な悪魔が真横に迫る。
ダンテが『まさか』と思う前に、巨大悪魔は街を一飲みに出来そうな大きな口を開けてダンテを、自身の体内に文字通り飲み込んだ。