捜索
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飼育プールでの戦闘の疲れを少しでも取る為にジャンヌとビリーはホールに戻った。
埃が乗ったままの階段に腰かけて次の行き先を決める。
「ねえ、この鍵の模様……火のマークかしら?」
ジャンヌは入手した赤い鍵をまじまじと見ながら呟いた。
持ち手の六角形の部分に刻まれた模様は確かに炎の形をしている。
それを見たビリーは、ふとある事を思い出した。
「この模様……どこかで見たな」
「本当?」
「ああ。確か……ジャンヌと別れた後だから、図書室の奥の扉だ」
「なら、行き先はそこね」
幸い近い距離だったので苦にはならなかった。
2人は再び図書室前廊下へ向かう。
「教官室か……。養成所だからあって当たり前か……」
真っ赤な扉の鍵穴部分には、鍵と同じ模様が刻まれている。
「そういえば……食堂にもこの扉があったわね。まだ使いそうだから、私が預かっておくわ」
鍵を開けながらジャンヌは言い、扉を開く。
その中はピリッとした空気が張り詰めていた。
厳かな部屋には死体はなく、ゾンビとの戦闘はなさそうだ。
薄暗い部屋の足元には小さめの段ボールが散らばっている。
「くそっ、邪魔だな……」
ビリーはボヤきながら箱を机の下に蹴り飛ばしながら進み、ジャンヌも足元に気を払いつつ、本棚を伝って電気を探していた。
「見た事のない本ばかりね。でも荒らされてるみたい……」
上下や背表紙がバラバラで、無造作に詰め込まれた本の何冊かは、何者かに持ち去られているようだ。
「例の調査隊かも……あっ」
漸くスイッチを部屋の奥に見つけた。
ジャンヌがすぐに明かりを付けると、部屋の中を隅々まで見渡せる程明るくなる。
「でもこんな部屋に何かあるとは思えないな」
「可能性は少なくても探しましょう。でなかったら私達、こんな所で飢え死によ」
「ゾンビになる前に餓死か……。それは嫌だな」
どのみち自分には死という道しかないけどな、とビリーは呟くがジャンヌには届かなかったようで、彼女は棚を漁っていくばかり。
「もうっ……何にもないじゃない……!」
例えこの部屋には化け物がいなくとも、養成所にはまだゾンビやウィルスに感染した生物がうようよしているかもしれないというのに、ジャンヌは随分と余裕を取り戻しているようだ。
そんな彼女の存在が、死刑を宣告されたビリーの心を確かに紛らわしてくれていた。
「ビリー?」
「……いや、何でもない。そうだな……銃弾も欲しいが、飢え死にするなら食料があるといいな」
軽い冗談を交えて彼は目線の棚を調べていると、立派な剥製の下を通った時に一際輝く物がビリーの視界に入った。
光は鹿の剥製の角から放たれている。
「何かあった?」
「ああ……。剥製に何かある」
位置的に少々高い場所にある為、ビリーは近くの椅子を台にして剥製を調べた。
角の部分に器用に置かれていたのは、まさに彼らが探していた物……なくなっていた時計の長針だった。
「やったじゃない!これで扉が開けるわ!」
「……よし、時計機械室に戻るぞ」
華奢な1本の針を大事そうに握り、2人は機械室に向かう。