第7話〜深淵の魔女ネヴァン〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ひどい目に遭ったぜ……」
リバイアサンに食べられた後、何とか体内から出られたダンテだったが、出た時に気に入りのコートは全身と共に血まみれになってしまったり、出たら出たでまたオッドアイの女と鉢合わせして悪魔退治する事になったり……。
因みに悪魔退治は彼女……名前はないと言われたので、命名した『お嬢ちゃん』───レディに任せて、塔に潜入するダンテ。
なお、血で濡れた体は魔人化したら綺麗に直った。
「それにしても、ゴールはどこなんだよ……」
気ままにあちこちを回るが、マヤの手掛かりは全くない。
今も見つけた禁断の果実というアイテムを見つけて、円刃通路から出たところだ。
ダンテの口の中では前にマヤがくれた、大好きな苺味のキャンディがコロコロと転がっている。
(マヤ……無事なのか……?)
見上げた夜の空の色が、キャンディをくれた彼女を連想させる。
酷い目に遭ってないだろうか。
怪我をしてないだろうか。
泣いてないだろうか。
そう想って拳を握った時、強い魔力を感じた。
「この気配……アグニとルドラか!?」
となれば、絶対に彼女も一緒だ。
ダンテは口に含んでいた飴を噛み砕いた。
「マヤ!?どこだ!!」
アグニ達の気配を懸命に探そうとするが、すぐに気配は弱くなってしまった。
「くそっ……!!」
か細い気配を頼りに探す為に魔人化して地底湖を走れば、流れ落ちる滝の奥に気配は続いていた。
「マヤ!!」
激しい滝も恐れずに飛び込めば、中は鍾乳洞になっていて意外と広かったが、今のダンテにそんな事は関係ない。
「マヤーッ!!いたら返事を…………っ!!」
その時にダンテが見たのは、何かを探すように徘徊するヘルズだった。
ヘルズがいる場所とルドラ達の気配は同じ。
「まさか……!!」
ダンテが走る。
ヘルズの内の1匹が、何かを見つけて穴に飛び込もうとしている。
「うおおおおおおおっ!!」
群れる悪魔にスティンガーとミリオンスタッブを喰らわせて穴の中を見遣ると、光る苔の中に横たわる人影が……。
「!!」
間違いない、マヤだ。
しかし彼女は全く動かない。
最悪の事態を予想したダンテに、プライドの鎌とグラトニーの衝撃波が命中するが、ダンテは微動だにせずにゆっくりとヘルズに向き直った。
「お前ら……マヤに何をした!?」
強い殺気に怯えるヘルズ。
だがダンテはリベリオンを片手に詰め寄る。
一斉にヘルズ達が飛びかかるが、最初の1匹がプロップシュレッダーで斬られ、他のヘルズは魔人化したダンテの姿が変わったと思う間もなく、巨大氷柱に貫かれて砂に戻った。
「マヤ!!」
リベリオンを持ち直して彼女が倒れている穴に飛び込む。
「マヤ!しっかりしろ!!」
ぐったりして動かない彼女を抱き起こして声をかける。
顔や服に砂が付いていた事から、グラトニーの攻撃を受けた事を察するダンテ。
砂を払う為に顔……頬を撫でてやった時、マヤの眉が動いた。
「う……んっ……」
「マヤ……!?」
ゆっくりと、時間が遅く流れるようにマヤが目を開く。
「マヤ……!!」
感動の再会だが、ここでダンテが大変な事に気が付いた。
魔人化したままだった。
途端にダンテの中に不安が渦巻く。
脳裏に蘇る自分を見て怖がったマヤの顔は二度と見たくなかったのに。
けれど―――……。
「ダンテ……。無事だったんだね……」
「!」
こんな姿をしているにも関わらず、彼女は自分だと分かってくれ、微笑んでくれた事に歓喜した。
「分かるのか……!?」
「分かるよ……。だってこんなに赤が似合う人、ダンテ以外にいないもん」
にこりと笑ったマヤが本気で天使に見えた。
ダンテは魔人化を解いて彼女を抱きしめる。
「マヤ!!」
「きゃっ!!く、苦しいよダンテ!!」
「マヤが無事で良かったぜ!!安心しろ!マヤをいじめた悪魔は俺が倒してやったからな!」
「いじめたって……」
それでもダンテの温もりが懐かしかった。
恥ずかしさもあったが、今はこの温もりを味わいたくて、マヤはそっと目を閉じた。
「良かった……ダンテが無事で……」
「俺だって……!大丈夫だったか?バージルに酷い事されなかったか?」
「うん。大丈夫…………あっ」
「……『あっ』?」
体を離してあからさまに怒りを露わに、ダンテがキッと睨む。
「何かされたのか!?」
ずずいとダンテが迫った。
「で、でもバージル……看病してくれたよ?」
「はあっ!?あのバージルが看病……いやいや!!それ以前に、看病される程具合が悪くなったのか!?」
しまった。
ますます墓穴を掘った。
「あ、あのねダンテ。この塔に入った時、私……雨で体冷やしちゃったり、魔界の気をダイレクトに浴びちゃって熱出しちゃって……」
「熱?」
するとダンテが額を合わせてきた。
「ひゃあっ!?」
「……熱ないぜ?」
「ちょ……!!も、もう熱はないから大丈夫だよっ!!」
きゃんきゃん喚くマヤだが、ダンテにとってはその仕草すら懐かしくて……。
顔を離すと、もう一度彼女を抱きしめた。
「それだけ元気なら心配ないな」
「ダ、ダンテ~……」
「……ちなみにマヤ」
「はい?」
「他には何もされてないよな?何か言われたりしたか?」
「え?えと……」
(バージルと何を話したっけ?)
「んと……熱が出て看病してくれた時に『お前はダンテの何だ』って、バージルに聞かれたよ」
「……は?」
ダンテの目がこれでもかというぐらい丸くなる。
「な、何って答えたんだ!?」
「何って……家族でも友達でもないよって」
家族でもなく、友達でもない。
ダンテの脳内には恋仲という選択肢しか残らず、思わず食い気味に「つまり?」と尋ねてしまった。
「んと……拾われた猫と飼い主」
「…………」
『パリーンッ……』
(と……友達以下?)
聞かなければ良かった。
ダンテの背景がひび割れた気がしたが、言わずもがな比喩的な表現で、別にヘルズが現れた訳ではない。
「……ダンテ?」
「い、いや……何でも……」
バージルに刺された時よりひどい致命傷を負った感覚が胸に突き刺さる。
けれどもマヤはまたとんでもない事を言った。
「あと、バージルに急に抱きしめ……って程でもないけど、体を寄せられて『俺が怖いか』とか言われて……」
「だっ……!?」
「でもその時のバージルの言い方が挑発的で、ちょっとムッとしたから、つい怒鳴り返しちゃったの。そしたら『気に入った』って……」
「き、気に入った!?」
「その後に『嫌いじゃない』って言われたかなぁ」
「…………」
つまり裏返せば『好き』という事ではないか?
ショックのあまりに危うく魔人化しかけるが、何とか堪えて姿なきバージルに怒りを抱く。
「バージルの野郎~っ……!!」
その様子を見たマヤは相変わらずズレた考えで
(怖い思いをさせられた事は言わない方がいいかな……)
と考えていた。
そっちじゃないが、誰も言う人がいないので取り敢えずこの話は終了する事にした。