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地下への階段は暗く冷たかった。
僅かに聞こえる風が過ぎる音も、まるで悲鳴のようだ。
ビリーとジャンヌは銃を握る手に力を込め、深く深く降りて行く。
しばらく続く足場の悪さにジャンヌは溜息ばかり。
そんなジャンヌの背中をビリーは黙って後ろから見ていた。
背格好こそ全く違うが、1年前に見た仲間の背中と被り、一瞬でも周りの湿った空気も何故か灼熱の日差しにも思えた。
(あれからもう1年になるのか……)
自分の腕に付けられた罪人の証が彼の意識を遠い場所に運びかけていると、俄かに小さな悲鳴がすぐ傍で漏れた。
「きゃっ!!」
「!」
ビリーがその悲鳴でハッと我に還った。
「大丈夫か!?」
「な、なんて事ないわ。ちょっと足を滑らせただけよ」
ただでさえ暗くて見にくい足場に加え、湿気で滑りやすくなった階段に足元を取られてしまったようだ。
何事もなかったように進むジャンヌを見たビリーの鼓動は異様に早くなる。
(そうだ……。あの時も俺の前にいた奴が、次々に倒れていった……)
似てもないのに、何故か1年前の事件に色々被るのがとても不思議で、堪らなく不快だった。
忘れかけてた罪が沸々と頭に蘇る。
悲鳴を上げて倒れる仲間。
必死に命を請う者達。
響き渡る銃声と硝煙の匂い。
澄んだ青い空……。
(何で今更……こんな時にっ……!)
眉間を寄せ、奥歯を噛む仕草で記憶を押し殺そうとするビリーの頬に汗が伝う。
「……ビリー?どうしたの?顔色悪いわよ?」
「!」
再度ジャンヌの声に呼び戻されると、自分を憂う眼差しが向けられていた事にやっと気づいた。
「少し休む?ずっと養成所を歩き回ったんだし……」
これまで行動を共にしていたジャンヌだったが、こんなビリーを見るのは初めてだった。
理由は分からないが、随分気が滅入っているようだ。
「……いや、大丈夫だ。先へ進むぞ」
汗を甲で拭って見え見えの痩せ我慢を吐くが、言い返したところで頑固な少尉の足を止める事は出来ないだろう。
ジャンヌはそれ以上は言わず、自分を追い抜く背中を黙って見るしか出来なかった。
漸く階段が終わったが、辺りの景色はあまり代わり映えしなかった。
少し違うのは人工的な明かりがある事ぐらいだろうか。
「マーカスの日記には……この地下で人体実験をしていたってあったわよね……。もしかしたら、上にいなかった別の化け物がいるかもしれないわ」
「視界も良くない。充分に気をつけ……」
ビリーが話している最中、ジャンヌの真上に大きな影が現れた。
「!!」
条件反射に彼女の腕を力の限り引っ張ると、それまで立っていた場所に毒液が降り注ぐ。
「何!?」
「とにかく撃て!!1体だけじゃない!!」
影は無音で天井や壁を這う。
不安定な視界の中、ジャンヌは気配を頼りに引き金を引く。
ハンドガンの効果は薄いと判断すると、僅かな火花で浮かぶ影を睨んで今度はショットガンを構える。
「下がって!!」
手応えを感じ、もう一方の影にも銃弾を浴びせる。