美しく心地のよい朝の日差しは女王ヒルにとっては毒そのもので、おぞましい身体からは焼けただれるような音が立つ。
しかし苦しみ悶え、暴れ回る女王ヒルに2人は弾き飛ばされてしまった。
互いに離れた場所まで倒された隙に、女王ヒルは日差しのないリフトの方へと這っていく。
トドメを刺さなければいけないのに、決定打になる武器がない。
そう
ジャンヌが悔しげに唇を噛んだ時だった。
隅の暗がりに映える銀色の銃。
搬入口から潜入した調査隊のものかは分からないが、
ジャンヌはその武器―――マグナムリボルバーを掴んだ。
弾が残っているのを確認した
ジャンヌは自分でそれを構えずに
「ビリー!!」
と、信頼出来る相棒の名を呼ぶなり宙へと放る。
無意識に、マーカスの始祖ウィルスの実験にされ、処分された幾多の亡骸を前に怒りを露わにした彼にこそ、終わりを託したかったのだろう。
彼はハッと投げ渡される銃を視線で捉え、それがゆっくりと放物線を描いて落ちる瞬間、それを掴んで悪夢の元凶へと向ける。
くだらない利己主義に翻弄され、真っ直ぐな心を傷つけられたビリーの眼光は鋭く、これまでに抱き続けた憤怒の感情を宿していた。
「オイ!化け物野郎!!」
けたたましいサイレンの光の中、右足を引いて銃口を女王ヒルに向けるビリーが吠える。
「これでも喰らいやがれ!!」
引かれるトリガー。
ほとばしる銀色の銃弾は回転しながら空気を裂き、躊躇いもなく女王ヒルの体を貫いた。
美しい朝の白い日差しを受けながら、おぞましい体が四散する。
まるで花びらが散るように。
あれだけの銃弾にも耐えて再生を繰り返していた怪物は、血飛沫を上げながら脆く儚く体を散らせ、そのままリフトのあった奈落へと重力のままに落ちていった。
―――その時、ドッ……という低い音が地底からしたかと思えば、女王ヒルが落ちていった先から爆炎が吹き上がる。
あちこちで爆発が起き、鉄骨の支柱も倒れ出して、本格的に施設の自爆が始まったのだ。
「ビリー!早く逃げ……きゃあっ!!」
「
ジャンヌ!こっちだ!!」
地下の爆発がここまで影響を及ぼして来た。
それ以上の言葉を交わす余裕もなく、2人はがむしゃらに外の世界を目指して走り抜ける。
そして―――……。
『ドォォォォンッ……!!』
悪夢の根元であるアンブレラ養成所は、それまで彼らが辿った研究所や処理場もろとも、大きな爆炎と共に消えた。
数々のクリーチャー、人の心を抱いたまま眠りに就いたキースの体、そしてマーカスの野望を飲み込みながら……。
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