衝突
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新たなゾンビを倒して進んで行き、目的地へ到着したビリーは難無く2階の廊下にあるワゴンからアイスピックを入手した。
簡単すぎて逆に怖いぐらいだが、トラブルがないに越した事はない。
「ジャンヌ、アイスピックを拾った。今からそっちに戻る」
簡潔に通信を終えて引き返そうとしたところ、上がって来た階段にはいつの間にかヒルがびっしりとひしめいていた。
これだけの数、踏み潰すのも撃ち殺すのも骨が折れる。
ビリーは噛まれては危険だと、廊下の反対のドアから戻る事にした。
扉の前の看板には“サロン・イクリプティックへようこそ”と書いてあった。
ドアを開いた先は、いかにも金持ち用と言わんばかりの広々とした豪華なサロン車だった。
有名な銘柄のワインを横目にふかふかの絨毯の上を歩いて行く。
幸いここには死体がないので戦闘もなさそうだ。
そう油断と呼べる隙が生じた時―――。
『ガチャーン!!』
「!?」
目の前のシャンデリアがいきなり落下して来た。
慌ててシャンデリアがあった場所に目を向ければ、巨大なハサミが天井を突き破っている。
「何だ!?」
ハサミが力ずくで天井を破壊したかと思うと、とてつもなく大きな物体が落ちて来た。
尾を伸ばせば4m以上になる程の巨大な蠍。
それがビリーの前に立ち塞がった。
「冗談だろ……!?こんなのとどう戦えって……!!」
ぐるりと辺りを一望すると、壁にかけてある額縁にはめられた猟銃の存在に気づく。
「あれだ!!」
ただのお飾りでない事を祈り、猟銃まで一目散に走った。
一応牽制でハンドガンを撃つが、やはりウィルス投与に因って強化された外殻に弾かれてしまう。
(やっぱりこんな拳銃程度じゃあ……。……!?)
ビリーがある事に気づく。
狙いを色々変えて発砲した時、ある箇所を撃たれた大蠍が苦しみ悶えたのだ。
「成る程、頭か……!!」
弱点を発見したビリーの口が緩やかな弧を描く。
時折ハサミで弾かれるが距離と取る為に頭部を集中的に狙った事で、漸く猟銃に手をかける事が出来た。
幸運にも武器として活用出来るようだが、ここで問題が見つかった。
弾がたったの2発しかないのだ。
―――外せない……。
軽いプレッシャーがビリーを襲う。
その一瞬の隙を突かれ、蠍の尾が彼に襲いかかる。
「くっ……!!」
避けながらカウンターで拳銃を発砲するが、狙いを頭部から外してしまいハサミの関節に当たる。
しかし偶然にも当たった場所が良かったらしく、左手のハサミがちぎれ飛んだ。
「今だ!!」
大蠍が暴れ狂ってるうちにビリーは散弾を撃ち込む。
急所を撃たれた蠍はさらに暴れ出し、片側だけのハサミを振り回した。
「!!」
咄嗟に体を庇った為にハンドガンを弾かれてしまった。
しかも猟銃はもう動作不良を起こしかけている。
「次でラストか……!!」
だがのたうち回った拍子に蠍は残ったハサミも壁に突き刺し、身動きの取れない状態に陥った。
当然の事、この絶好のチャンスをビリーは逃さなかった。
動かないように頭を足で踏みつけ、銃口をぴたりと蠍の頭部に押し当てる。
「―――終わりだ」
猟銃が最期に火を吹いた。