侵入
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その先は蝋燭や松明の揺らめく広いホールだった。
後ろ合わせに2人は辺りを一望すると、ホールの床に堂々と飾られた会社のロゴマークと文字から、ここがアンブレラ社の幹部養成所だと知った。
「明かりは点いてるが……人はいるのか……?」
ビリーが揺れる照明を見つめながら呟いてる間、ジャンヌはホール内の階段をゆっくりと登ると、大きく立派な肖像画が現れる。
しかしそこに描かれていた人物を見て、彼女は寒気を覚えた―――……。
「!!」
今でもはっきりと覚えている、悍ましい悪夢。
列車内で自分を襲ったヒルの集合体が形を成していた、あの老人だったのだ。
「どうしてこの人が……!?」
驚愕するジャンヌの横にビリーが立ち、どうしたのかを尋ねる。
ビリーは老人の姿を見てないから無理もないが……。
説明を聞き終えた後、彼はまた肖像画を見る。
その隅に書かれた名前は……。
「“初代所長ジェームス・マーカス”……」
「誰だあの2人は?」
その姿をカメラ越しに見るのはあのウィリアムとウェスカー。
無人のはずの養成所に突然現れた2人を見てバーキンは少々驚いた様子だ。
「女は確か陸軍の隊員だ。前にS.T.A.R.S.との合同訓練で一度だけ会った事がある」
「ふむ……。男は?」
「知らんな……」
淡々と交わされる会話。
しかしここで会話は途切れる事になる。
「“静粛に。所長のマーカスである”」
「!」
ホールに響く音声。
どうやら閉鎖前のマーカスの声を流しているようだ。
これをホールにいるジャンヌとビリー、そしてモニターを見ていたウェスカーとウィリアムが聴き入る。
「“当養成所の方針を告げる。『忠誠』は『服従』を生み、『服従』は『規律』を生む。『規律』は力となり、その力が全ての源となる”」
放送はここで終了した。
だがしかし―――……。
「……っ!?誰だ貴様は!?」
モニター室の2人が俄かに驚倒した。
肖像画の前に立つジャンヌとビリーを映していたモニターがいきなり占拠され、画面に不気味な笑みで立つ1人の青年が映し出されたからだ。
バーキン達は知らないが、ジャンヌが擬態ヒルに襲われた後に現れた青年だ。
ウェスカーの詰問に青年はゆっくりと口を開く。
「洋館をt-ウィルスで汚染させた者だ。勿論列車の汚染もな」
「何!?」
今までのウィリアムの疑問がこの一言で消え去った。
研究所のある洋館のウィルス漏出。
ウィルス研究所から3マイルも離れていたはずの列車の汚染。
それを全て彼がやったと言うのだ。
「復讐なのだよ……。アンブレラへのな!!」
青年は翼を広げるように両腕を広げ、列車を襲った時と同じく美しいソプラノ声で歌い出した。
集まるヒルの群。
それがまた人の形を成し、ギロリとウェスカーとウィリアムを睨み据える。
「マーカス所長!?」
(バカな!所長は10年前確かに―――……!!)
どうして彼が……いや、ヒル達が彼に擬態したのか。
新たな疑問が出現した中、青年は変わらぬ口調で言う。
「10年前、彼はアンブレラに殺された。……お前達も手助けをしただろう……?」
ウェスカーは静かに眉を寄せた。
この事実を知っている者は自分と隣にいるバーキン、あとは一緒に立ち合った隊員だけだ。
無論、必要ならば隊員達には『口封じ』という手段も用いた。
だがこの青年は10年前の事件を知っている。
何故彼が知って、熟知というレベルで語るのか……。
答えが分からぬままに、モニタールームには青年の妖しい笑い声だけが響いた。