「……?何かしら……」
あれからかなり離れた道に焦げ臭い匂いが漂っていて、道路には匂いの原因だと分かるタイヤ跡が、破壊されたガードレールの先まで伸びていた。
「まさか……!?」
ジャンヌの脳裏に最悪の事態が過ぎる。
あってほしくない。
思い過ごしであってほしい。
そう願いながらタイヤの跡を辿って行く
ジャンヌ。
そして辿り着いた場所には―――……。
「っ……!!酷い……!」
広がったのは凄惨な光景だった。
かなりのスピードで木に衝突したのだろう、護送車は無惨に大破し、つい先程に会話を交わした2人のMP達は車から放り出され、血まみれで絶命していた。
だが事故死にしてはおかしい傷痕がある。
MP達はまるで何かに噛みちぎられたようだ。
ジャンヌは警戒をしながら車に寄り、散乱した紙の一枚を手にするとそれを静かに読み上げた。
「移送指示書……。囚人名、ビリー・コーエン。元……海兵隊少尉……」
その後
ジャンヌの目が大きく見開かれた。
理由はその移送指示書の最後の文にあった。
「第一級殺人罪にて起訴……。軍法会議において……死刑判決!?だ……第一級殺人罪!?一体何人殺したのよ、このビリーって……!?」
第一級殺人罪とは、そうざらにない事だ。
あのまま警官達に快く送迎をOKされていたら、こんなに恐ろしい殺人者と相席したのかもしれない。
そう考えただけでぞっとした。
その時
ジャンヌはある事に気付く。
―――ビリー・コーエンの死体がない。
(まさか……彼が警官を殺して逃走した……?)
またもや良からぬ考えが浮かぶが、死体がない理由は他に考えられない。
幸い任務直後で
ジャンヌはいくつか武器を持ち合わせていたので、万一ビリーに襲われても大丈夫である。
「……となると、このスーツケースは邪魔になるわね」
ケースの中には使い慣らしたハンドガンが2丁、押収した密造された銃、護身用のナイフと様々な銃の弾が詰め込まれていた。
素早い手つきで銃弾をハンドガンに詰め、残りをナイフと一緒にウエストポーチにしまう。
「……折角だから使わせてもらおうかしらね……」
そう言って密造銃も太もものホルスターにしまい、これで準備は万端だ。
そして
ジャンヌは冷たくなった警官達に一礼をし、単身でビリー捜索を開始した。
その行動と選択は正しいのか否か。
答えへと続く物語が今、始まった。
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