第1話〜悪魔狩人ダンテ〜
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蹴り飛ばされたドアが、軽い素材の作り物のように吹き飛んでいく。
マヤがこの世界に来て初めて見た外の景色は、暮れかけた真っ赤な夕空と目茶苦茶になった建物達。
そしてじりじりと自分達に迫る悪魔、ヘル=プライドの群れ。
「た、たくさんいる……」
怯えるマヤを余所に、ダンテはかつての自身の事務所だった建物を振り返るが、建物は見るも無残に崩壊寸前。
「酷いな……。店が台なしだ!名前も付けてなかったのに!!」
歯を食いしばるダンテはゆっくりと悪魔達を睨みつける。
「弁償してもらおうか!!」
言うなりダンテはコートと剣を真上に放り投げた。
そしてまるで踊っているかのようにコートを華麗に着てみせると、丁度落下して来た剣を振り下ろしてスタイリッシュに決める。
(カッコイイ……)
綺麗な銀髪に透き通るような蒼眼。
高い鼻に整った唇……。
(第一印象からカッコイイのは分かってたけど……改めて見ると、本当にダンテってカッコイイんだなぁ……)
思わず拍手がしたくなったが、直後に拍子抜けする事態が起こる。
「っ……へぶしっ!!」
くしゃみ。
裸でいればそうなるだろうと、思わず苦笑するマヤだったが、その苦い笑いすらもすぐに消えてしまう。
『ドッ……』
「え?」
大きい音に振り返ると、あっという間にマヤはダンテと一緒に砂煙に飲み込まれた。
―――程なく煙は治まったが、今まで崩れそうだったダンテの事務所が、完膚なきまでに崩壊していたのを見てマヤは絶句し、ダンテは剣を握る手に力を込め、その剣でヘル=プライド達をギラリと差す。
「……思ったより高く付きそうだな!!」
ダンテがピザを踏み潰された時以上に怒りを露にした。
「マヤ、派手になりそうだから、全力で逃げ回ってろよ!!」
「えぇっ!?そんな無茶な……!!」
「無茶でもやるしかないぜ!!こいつらに美味しく食べられたくなかったらな!!」
「でも私、運動音痴だからすぐ捕まっちゃうよ~」
マヤの多数あるコンプレックス、その1つは運動音痴。
加えてスタミナがなく、すぐに疲れてしまう傾向があった。
泣き事を訴えられ、ダンテは最初に困ったように盛大な溜息を吐く。
そしていつもの口調で「今はそんな子供の駄々は通用しないぜ?」と言おうとした。
―――そう。した、のだ。
マヤの顔を見た途端に、言いたい台詞が喉で止まって遥か彼方に消えてしまった。
潤んだ茶色の瞳。
それがじっと自分だけを捉えている。
加えて大きな身長差がある故に、彼女が自然に上目遣いになっていて、仕舞いには甘えるように服の袖を掴んで名前を呼んで来るのだ。
(オイオイ……反則だろ)
マヤのコンプレックスになっている背丈の低さと東洋風の幼い顔立ちが、見事なまでにダンテの脳を激しくパンチする。
一瞬だけ見惚れてしまったダンテだったが、悪魔の呻き声を耳にするとハッとしてマヤを自分から少しだけ離した。
「……チッ。いいところだったのに……。……分かった。じゃあマヤにプレゼントだ」
「プレゼント?」
言うなりダンテが出したのは、コインぐらいの大きさのブローチのような物。
「適当にお菓子と一緒にポケットに突っ込んでおきな。それだけでビックリするぐらい、体が軽くなるぜ」
「これで……?」
トパーズのような石が飾りに施されたそれをまじまじと見つめるが、真横からの悪魔の接近に中断させられてしまう。
「嘘だと思うなら走り回ってみな」
ほら、とダンテがマヤの背中を強く押し出した拍子に2、3歩前によろけた。
「ちょ……ダンテ!!」
いきなり押すなと怒鳴ろうと振り返ると、彼との間に異様な距離感が生じていた。
歩幅を考えて、この距離はおかしい。
マヤは首を傾げると、自分に影が降りる。
「……?」
影の差す方を向くと、ヘル=プライドが鎌を構えてマヤを睨んでいた。
「きゃあああぁぁぁーっ!?」
脱兎の如く走り去るマヤ。
間近で見る悪魔は恐怖を醸し出していて、赤い目はまさにヘル=プライドという名前の通り、地獄の傲慢さを表すように見下していた。
「オイオイ、女ならもっと可愛い悲鳴を上げるべきだぜ?」
「そそそ、そんな事言ったって~っ!!」
皮肉るダンテは相変わらずの口調で悪魔を斬り捨て、2つの拳銃で撃ち抜く。
(まるで当たり前みたいに悪魔を倒してる……。ダンテって一体……)
何者なのだろうと再度ダンテに向き直ろうとすると、また距離感がおかしいのに気づく。
「また……?」
「マヤ!試しに一歩走ってみな!」
「へ?」
一歩は走る事なのだろうかと疑問が浮かぶが、そんな事を考える間もなく悪魔達はマヤを標的に、どんどん群がって来ている。
「もう嫌ぁ~っ!!」
言われるままに一歩だけ足を走る動作と同じように動かすと、妙に体が軽かった。
「……あ、れ?」
踵を返すと、群れは随分離れた場所にいる。
「さっきあげたヤツはトリックスターっていう、持ち主の回避能力を上げるオーナメント!ついでに壁も歩けるぜ!」
「トリックスター……?」
悲しいぐらいに運動の類が苦手な自分が、こんな動きが出来るとはなんて便利……否、すごい代物だ。
「マヤ!それがあれば、頑張って逃げられるな!?」
余裕を持った、やや強い口調。
それにマヤは元気に答える。
「うん!私……頑張る!」
無邪気な微笑みにまたダンテの思考がストップする。
「……調子狂うな」
ぽそりと呟くと、何度目かになる悪魔退治に励んだ。
「さーて、料理されたい奴から前に出な!!」
ダンテは変わらず剣の舞を披露している。
マヤもマヤで、トリックスターを使って悪魔の接近から回避し続けていた。