「ロイヤル……?ああっ!あのオーナメント!?」
ポケットから緑のオーナメントを取り出してみると、3つの宝石が鼓動するように光っていた。
「やっぱりな。蓄積されたダメージとかを相手にぶつける能力を、咄嗟に放ったんだよ」
「それで……」
「成る程。力の秘密は分かった。……兄者」
「分かっておる。―――
マヤ」
「はい?」
気の抜けた返事をしたら、アグニからとんでもない事を言われた。
「汝も我が兄弟の主と認めよう」
「えぇっ!?」
「はあっ!?」
これには堪らずダンテも驚いて素っ頓狂な声を上げた。
「待てよ!!お前らを倒したのは俺だぞ!?」
「だがその前に
マヤのリリースと銃撃で我が体は既に倒されていた。小僧の一撃がなくてもな」
「こ、ぞっ……!?」
「それでもアグニを倒したのはダンテだよ?」
「いや。後に我と兄者は共に戦った。それを倒したのは
マヤ、汝だ」
小僧発言に怒りが沸騰するダンテを余所に話が進むが、確かに彼らの言い分は正論だ。
「でもさ、私……本当にただの人間だよ?まあ、トリップした時点で普通じゃないけど、リリースの件もダンテがくれた力のお蔭だから、実際はヘル=プライド1匹も倒せない一般人ですが」
「尻餅で倒した事あるけどな」
「その件は忘れて下さい」
ダンテのツッコミに即座に言い返す
マヤだが……。
「問題ない」
「
マヤ、試しに我らを振るってみろ」
そうは言われても、剣なんて握った事もない。
それらしい構えをしたのは、箒を小学校での掃除以来で。
しかし場の空気でそんな事を口にしたら怒られるだろうと、
マヤはダンテの手からアグニとルドラを受け取る。
「し、失礼します」
恐々と握るが、自分の半身程ある長さの双剣なのに不思議と軽かった。
そして構え方すらも知らないのに、その場で華麗な演舞を披露する
マヤ。
優雅に踊る彼女の姿に、傍らに立つダンテが見惚れたのは言うまでもない。
「どうじゃ?」
「ど、どうして今みたいなすごい動きが出来たの!?初めてだったのに……!」
「我ら兄弟は我らを操る者に力を授ける。それ故じゃ」
ダンテのように元々力を持つ者にはしないが、とルドラに言われて
マヤは納得の意を示す。
「つまりは私が剣の扱いがド素人でも、2人がいればプロ級に剣が使えるようになるって事だね」
「そういう事じゃ」
やったと喜ぶ
マヤと、逆にふて腐れるダンテ。
「……ダンテ?」
様子がおかしい事に気づくと、
マヤは記憶を戻して原因を辿る。
(アグニとルドラが『小僧』なんて言ったから?でもそれで怒る程ダンテも子供じゃないし……)
となると、考えられた事はおおよそ見当がついた。
「ごめんなさい。私がアグニとルドラに喋っていいって言って……」
これしかなかった。
でもダンテは「そうじゃない」と言ってくる。
「じゃあどうして怒ってるの?」
ピュアに尋ねられたダンテは一瞬だけ固まり、今度は「何でもない」と言い張って歩き出してしまった。
「何でもない訳ないのに……」
けれど、そんなダンテの一挙一動に
マヤは覚えがあった。
すぐに答えを見つけると『あっ』と小さく声を零して顔を綻ばせた。
「ダンテ」
呼ばれたダンテが振り返ると、彼女が手招きをしている。
何だと近づくと、今度は『しゃがんで』とジェスチャーで促された。
促されるままに
マヤの前に腰を落とすと、急に頭を撫でられる。
まるで母と子のように。
「1人にしてごめんね」
当てられた。
ダンテは耐え切れず、赤い顔に手を当てて下を向いてしまった。
クスクスと笑う
マヤは「私と一緒だね」と言う。
「私もダンテと一緒で、兄弟の下なんだ。それで、みんなが上ばっかり構うとふて腐れちゃって……。ダンテもそんな顔するんだね」
嬉しいと付け足された時には、ダンテはこのまま抱きしめたい衝動を抑え切れそうになかった。
なのに、その空気を呆気なく邪魔されてしまう。
「―――青春じゃな」
「セイシュンとは何じゃ?」
「セイシュンとは……」
「だからそれはもういいって!!」
結局、水を差したアグニとルドラは『
マヤの力になるのは構わないが、
マヤがOKした時以外は喋るな』と、ダンテから少々面倒な条件を出されたのだった。
第5話⇒