肖像画自体を調べても特に何も怪しい所はなかった。
どうやら別の仕掛けがあるようだ。
「この石像の使い道も分からないままだな」
ビリーは左手で石像を軽く放りながらぼやいた。
石像が上に飛ぶ度に彼の腕に付けられた手錠の鎖が音を鳴らす。
「大切にしてよ。それがなければ脱出が出来ないかもしれないんだから」
注意しながら
ジャンヌは肖像画の周りの壁や床も調べるが何もなかった。
「肖像画にも下にも何もないなら……」
ジャンヌが見上げた先には、集会所の扉の前に立つ女神像があった。
これまでは気にする事はなかったが、今ではその像に何かあると感じる。
「ビリー」
彼の名前だけ呼び、顎で女神像を差す。
「……調べてみるか」
煩わしい階段を登って女神像の元へ行くと、像には天秤が取り付けられていた。
片方の皿には女性の体を思わせるような胴体の白い像があり、女神像の下には羽の形のパーツが転がっている。
「この白い像、さっき見つけた黒い像と似てるな」
ビリーの言う通り、2つはまるで天使と悪魔を表すようだった。
「白い像が天秤にあるなら、それを片方に乗せればいいのかしら……」
しかし置いてみても何も起きない。若干黒い像が重いようだ。
重みが足りないなら……と、
ジャンヌは落ちていた羽を白い像に取り付けて皿に置き直す。
すると足元から大きな音がした。
「何かが動いた……?」
確かめる為に階段を降りてみて初めて変化が分かった。
肖像画は地下への階段を隠す為の壁代わりにすぎず、天秤に同じ重さの像を置く事で絵がスライドされて通路が現れる仕掛けだったようだ。
かつて、マーカス所長の肖像画があった場所には、不気味な地下へと続く階段が重苦しい雰囲気を放ちながら口を開いている。
「これがマーカスの秘密なの……?」
「何があるか分からない。気をつけて行くぞ」
今にも吸い込まれそうな空気に
ジャンヌは息を飲む。
そして2人は武器を携え、未知なる場所へと静かに進むのであった。
……だが2人は知るよしもなかった。
その先で残酷な事実を知る事になろうとは―――……。
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