マヤが目を開くと、鍾乳洞に立っていた。
遠くで落ちた雫の音が響いて来る。
「ここ……どこ?」
少なくとも、今まで通った場所ではない。
テメンニグルのまだ訪れていない場所か、はたまた全然違う場所なのか。
マヤにそれを知る術はない。
「参ったなぁ……。アグニとルドラはここがどこか知って……」
マヤが言い切る前に、真後ろにガランッと音がした。
「アグニ!?ルドラッ!?」
地面に転がる2本の剣は色が褪せてしまっていて、どちらがどちらか分からない。
「どうしたの!?しっかりして!!」
「すまん……力を使い果たしたようじゃ……」
「あの男から
マヤを逃がすには、この手しかなかった……」
「私を逃がす為に……!?」
「我ら兄弟の力を合わせたとしても、まず太刀打ち出来なかった……。だからせめて
マヤだけでも助けようと、兄者と相談し……」
「力を温存した。そして
マヤの発熱も我が力として使わせてもらった……」
「……!」
どうりで、体力を回復しただけで熱の怠さがなくなった訳だ。
「アグニが熱を治してくれたの……!?」
マヤの瞳からポロポロと涙が零れる。
「ごめんね……!ありがとう……!!」
「礼などいらん……。我を雨から守ってくれた礼じゃ……」
「!!」
テメンニグルの屋上での出来事を覚えていたアグニに、
マヤはただ涙した。
「しかし……もう我らは空っぽじゃ……」
「大丈夫!?2人共……死んじゃったりしないよね……!?」
「安心しろ……我ら兄弟はこんな事で死んだりはせん……」
「少し眠りにつけば……また……」
「え……?」
そして2人が静かになる。
「ルド……ラ?アグニ……?」
返事は来ない。
「私のせいで……ごめんね……!」
マヤの涙が止まらない。
だが俯いて涕泣する彼女の後ろに、たくさんの魔物の影が出現するが、彼女は気づいていない。
現れたのは傲慢のヘル=プライドと暴食のヘル=グラトニー。
まず動いたのはグラトニーで、一歩距離を置くと大気中に浮遊する砂を一気に吸い込んだ。
「!」
漸く
マヤが悪魔に気づいたが、既に遅かった。
双剣を抱えて振り返った直後、グラトニーが吐き出した衝撃波で吹き飛ばされてしまう。
「きゃあああああっ!!」
砂煙が巻き上がった。
視界が塞がると、体が浮かんでいるような感覚になり、後ろを向けば大きな穴が……。
成す術なく、激しく地面に叩きつけられて坂を転がり落ちた
マヤが最後に見たのは、自分を探す悪魔のたくさんの赤い目だった。
「ダン、テ……」
その声は誰にも届く事はなく、
マヤの視界は闇に塗り潰された。
第7話⇒