第7話〜深淵の魔女ネヴァン〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ダンテは……あの後どうしたの?」
高ぶらせたダンテの気持ちが鎮まったところでマヤが尋ねる。
「悪魔の血が目覚めた後、マヤ達を追って塔を飛び降りた」
まだ本調子でないマヤの為にしばし休憩を取り、2人は隣り合わせに座っていた。
「そしたら、こ~んなデッカい悪魔に一飲みにされちまってさ」
ダンテが両腕を目一杯広げて説明すると、マヤは驚いたり関心したりして黙って話を聞く。
「またこの悪魔、デカ過ぎるもんでさ。胃の中にバスや船があって驚いたぜ。あと俺を飲み込んだ悪魔……リバイアサンの体内が嫉妬の地獄に繋がっていたせいで、嫉妬の悪魔ヘル=エンヴィがたくさん出てさ」
がしがしと頭を掻いて疲れたとぼやくと、よりマヤをビックリさせる話題があった。
「そういえばさ、リバイアサンの中にギガピードがいたんだよ」
「えぇっ!?あのギガピードが!?」
「そう。しかも2匹も」
「ギガピードが2匹って……よっぽど大きかったんだね。そのリバイアサン。……でもリバイアサンって、水中に生息してるって本で見たけど……違うもんなんだね」
「ああ。……でもさ」
不意にダンテが肩に腕を回してきた。
「俺はともかく……マヤはよくバージルから逃げられたな。まだ信じられないぜ」
「それは…………あぁっ!!」
どうして逃げられたんだっけ?と思い返した途端、ダンテを突き飛ばして辺りをキョロキョロし始めるマヤ。
程なく、傍に転がる赤と青の剣を見つけて掴み取った。
「アグニ!ルドラ!生きてる!?元気!?」
「…………」
突き飛ばされたダンテの目は点である。
「えと……マヤ?」
「2人が私を逃がす為に、力を全部使ってくれたの……」
「コイツらが?」
「2人がいなかったら、それこそ私……どうなっていた事か……」
「そうか……。……でも!」
ダンテはマヤの手から双剣を奪い取ると両方にデコピンを喰らわせた。
「マヤが心配してるんだから、さっさと声かけてやれよ!」
「何を言う!機会を奪ったのは汝じゃろう!」
「兄者の言う通りじゃ!喋れば喋ったで文句を言うじゃろう!」
「何ィ~!?」
喧嘩をし始める3人……もとい、1人と2本だが、マヤはそれを見て鈴を転がしたように笑った。
「少しの間、離れてただけなのに……すっごく懐かしい……。みんなが無事で良かった……」
「マヤ……」
彼女の笑う仕種に、ダンテだけでなくアグニとルドラまで見入ってしまった。
「……マヤは人間にしておくのは勿体ないな」
「そうだな、兄者」
「バーカ。マヤは人間だからいいんだろ」
「フフッ、ダンテったら」
ありがとうとお礼を言うと、双剣の前に屈んだ。
「2人共、調子はどう?」
「問題ない」
「またマヤの力として共に戦おう」
「良かった!よろしくね!」
背中に剣を携えて立ち上がるマヤ。
「もう大丈夫か?」
「私のせいで時間かかっちゃったし……出発しよう!ダンテが休ませてくれたお蔭で元気になったよ!」
マヤが所謂ガッツポーズをしてみせると、ダンテも立ち上がる。
しかし立ち上がったと思えば、マヤをひょいと横抱きにして歩き出した。
「出口がちょっと高いから、出るまではこのままでいてくれよ」
返事も聞かずにひょいひょいと穴から鍾乳洞に戻り、そこで彼女を下ろした……が、マヤは妙に静かだった。
「どうかしたか?」
いつもなら、顔を赤くして慌てるはずだ。
不思議に思って尋ねると……。
「あ……ううん。バージルにもこんな風に抱っこされたなって思い出して」
『ピキッ』
ダンテのこめかみに青筋が浮かぶと、2人を狙って現れた悪魔達が次々に斬り伏せられていった。
「あっの野郎~……っ!!何考えてんだぁーっ!!」
まるで時代劇でも見ているかのように悪魔達がばったばったと倒れていく様に、マヤは「わー……」と、少々哀れむように漏らす。
「あそこまで斬られちゃうと、悪魔に同情しちゃうね」
面白い程にあっさり斬られた悪魔の残骸を踏み越えて着いたのは、鍾乳洞の一番奥。
一糸纏わぬ女性のレリーフがあり、ダンテがその手の上に禁断の果実を置いて扉を開いた。
「なんか綺麗な扉だね。劇場みたい」
そう言って、ダンテが開いたドアの先を見たマヤは感嘆の声を上げる。
「わあ~!すごぉい!本当に劇場だ!」
「こんなに辺鄙な場所にある劇場じゃあ、観客は少ないだろうな」
中の様子を見て回ろうと足を動かした、その時だった。
『バササササッ……』
「ひゃあ!?蝙蝠!?」
初めて見る蝙蝠が自分達を掠めて通過すると、部屋の中心部に固まりを成す。
(今度は手応えがありそうだな)
ダンテは口を弧にして黒い固まりを見つめた。
そして固まりがある程度の高さを形成すると、青白いものが見える。
「?」
きょとんとするマヤ。
けれども直後に顔を赤くして絶叫した。
黒の中に青白いものがあり、続いて赤茶色が見えたと思ったら、固まりから美女が現れたのだ。
腰程の長い髪。
髪や睫毛の色は血を足したような赤混じりの茶色。
黄色い瞳で2人を見つめるその容姿は一見、普通の人間と変わらないのに、何故マヤが悲鳴を上げたか。
―――彼女がほとんど裸に近い格好だからである。