過去
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晴れ渡る青い空の下、不似合いな獰猛な怒鳴り声と銃の音が響く。
「いる者を全員引きずり出せ!!誰1人として見逃すな!!」
銃で威嚇されて怯える集落の人間達。
村の真ん中に集められ、テントが空になったのが部下に確認されると、ビリー以外の者が一斉にマシンガンを構えた。
その銃口が向く先には、罪のない23人の原住民達。
「撃て!!皆殺しにしろ!!」
「!?」
何故、どうして、何の為に。
その答えを出す前にビリーは駆けた。
「隊長!!やめて下さい!!」
銃を構える腕に手を伸ばす。
目の前で罪のない者が殺されるところなんて見たくない。
こんな事をしても倒れた兵も還る訳でもない。
利益を得るどころか人の道すら踏み外そうとしているではないか。
その思いから遂行されようとする“任務”を止めようとするビリー。
だが―――……。
「黙れ!!」
聞く耳持たれず、マシンガンで殴り飛ばされてしまう。
飛びかける意識を堪えた瞳に映る空は、残酷すぎる程に鮮やかな青だった。
地に倒れるビリーが次に見たのは、銃火と悲鳴を上げながら絶命する人々と立ち上がる砂煙。
充分なぐらい撃っても彼らの指は引き金からは離れない。
ビリーだけを置き去りに、世界がスローモーションになっているようだった。
地面に落ちるマシンガンの弾が1つ、また1つと増えるにつれ、悪夢を見るかのような恐怖が全身を走り抜ける。
「やめろ……!!」
体が、声が震えた。
持てる力の限りを尽くして駆け出し、そして叫んだ。
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」
再び伸ばした腕の先の隊長が振り返る。
その眼は人間のものとは思えぬ程冷たい色だったのに、ビリーが見た空と同じ色をしていた。
「それで……あなたも撃ったの!?」
問い詰めるジャンヌだったが、ビリーは彼女に背を向けてその件についてはそれ以上話そうとはせず
「だったらどうだっていうんだ」
と、突き放した言い方をした。
「もう過ぎた話だ。どっちでもいい事さ」
「どっちでもいい……!?私はっ……私はそう思わない!!」
彼が吐き捨てた言葉を否定する為に怒鳴るジャンヌ。
「止めようとしたあなたに隊長が全て罪を被せたんじゃないの!?それにさっきの護送車のMPも、化け物に殺されてあなただけは偶然逃げきれた……。そうなんでしょう!?」
そうだと肯定してほしくて、意図せずに口調が強まるが……。
「どちらにせよ―――……」
背中ばかり向ける彼に向き直ろうとするジャンヌの言葉を遮るようにビリーも口を開く。
「今の俺には2つの道しかない。軍に出頭して処刑されるか……逃げられるだけ逃げ続けるか……。それだけだ」
彼は質問に肯定も否定もする事はなかった。
己が辿る道も苦痛なものしかないと決めつけ、ジャンヌの思いを拒絶した。
「ビリー……」
胸がきつく絞められるように痛く、呼吸するのさえ苦しくなる。
でも彼の方がもっとつらいのだと、ジャンヌは唇を噛み締めて言葉を殺した。
「とにかく……今は休むぞ。お互い疲れてるんだからな」
それだけ言うとジャンヌを一度も見ずに部屋の中にある資材に寄りかかるビリー。
重たい空気の中、ジャンヌは敢えて彼の隣ではなく、死角の位置に座った。
(今の私はビリーの隣にいる資格はない―――……)
折り曲げた膝に顔を埋め、震える息を吐き出した。
込み上げる感情を抑える為に……。