古代竜の洞窟
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部屋に入った途端、強い熱気が襲いかかる。
広いとは言えない大きさの足場がいくつかあり、先の扉には鉄格子が施されていた。
「いいか?戦いになったら足場に気をつけろ。防戦になっても構わねえ。チャンスを狙って…………っ!?」
ダルニアの助言を遮る雄叫びが部屋中に響くと同時、2体のトカゲのモンスターが現れた。
「リザルフォスよ!!人から奪った武器で攻撃して来るわ!!」
「幸い盾は持ってないゴロ!!隙を突いて、一気に倒すぞ!!」
「おぉっ!!」
俊敏に足場を渡り、剣を振りかぶってくるリザルフォス。
1体はリンクに、1体はダルニアに襲いかかる。
「ルナ、ここは危ないから離れて!」
「う、うん!」
正直、加勢が出来る状況ではない。
鍔迫り合いになったタイミングでルナは足場を渡って行き、格子の前に立つ。
「やっぱりリザルフォスを倒さないと、先には進めないんだ……。リザルフォス達の注意を一瞬こっちに引いて、その隙に2人が倒せないかな……」
「でもリザルフォス、こんな熱い場所にいても平気そうだから、炎は効かないと思うヨ?」
「それならゴーマの時みたいに、風の魔法で……」
「ルナ!!危ない!!」
「!」
突然の声に振り返る。
目の前にはリンクじゃない緑色と光るナイフ。
「リ、ザル……フォス……!!」
逃げ場もなく足が震えてへたり込むルナに、逃げる術はない。
咄嗟にナビィを守る事を考え、両手に包んだ妖精を庇うように彼女はリザルフォスに背を向けた。
「ルナッ!!」
リンクが助けに行こうとするのを、武器を交えるリザルフォスがそれを許そうとはしない。
「くっそぉ……!!」
その時、隣の黄色が動いた。
そしてルナに振り下ろされたナイフ。
「っ……!!」
目を伏せ、直後に来る痛みを覚悟して息を呑んだが……。
『ガキィィィィィンッ!!』
音がおかしい。
鉄がぶつかったような……少なくとも、人を斬った音ではなかった。
恐る恐る目を開けると、さっきまであった緑ではなく、中黄色の体がそこにあった。
「ダルニア……さん……!?」
「怪我はねえな?」
さっきのは岩の背中でリザルフォスの剣を受け止めて、リザルフォスの武器が砕けた音だった。
武器が壊れて青ざめるリザルフォスが慌てて逃げようとするが、ダルニアが尻尾を鷲掴みしてそれを制止する。
「剣が折れたらトンズラか?オトコなら、ゲンコツで勝負したらどうだ?こうやって……なあっ!!」
ダルニアの拳に力が込められるなり、それはリザルフォスの顔面に叩きつけられた。
一直線に飛ばされ、リザルフォスが壁に減り込む姿にルナは目を点にするしかない。
「ケッ!化け物のクセに肝っ玉の小せぇヤツだゴロ!!」
手の埃を叩きながら言うダルニアの大きな背中の頼もしさと言ったら。
そしてこの瞬間、初めてルナとナビィは知った。
これがオトコなんだ、と。
一方のリンクもリザルフォスを撃破していた。
あちこちに砂汚れを付けていて、一見子供が遊びから家に帰って来たような光景だが、凛々しいリンクの表情にルナの頬が桃色になる。
それを見たナビィがわざと「リンク、カッコイイね」と意味深に彼女の耳元で言えば、素直にコクンと頷かれた。
「それにしても、ルナは魔法以外に戦えないんじゃあ、この先心配ゴロ。他に攻撃手段はないのか?」
「攻撃って……」
「ねえルナ、なンでも屋で貰った短剣は?」
ナビィに言われて思い出す、唯一の武器。
ポーチから出した短剣をダルニアに見せてみた。
「……ほう。これは見事な業物だゴロ」
「わざもの?」
「立派な剣って事だな」
リンクも自分の剣を見つめる。
「俺のコキリの剣も業物かな?」
「詳しく聞きてぇんなら、後でチュウゴロンの鍛冶屋に行ってみな。まだ鍛冶の腕は未熟だが、知識は豊富だからな」
ダルニアはルナに剣を返すと
「念の為にいつでも抜けるようにしておきな」
と付け足した。
正直、剣などの刃物なんて料理の時にしか使った事はないが、ナビィも
「ないよりかは安心だから、ダルニアさんのアドバイス通りにしよ」
と言う。
そんな彼女が小さく呟いた。
「……ルナ、さっきはありがとう」
誰にも聞こえない程の、小さな声で。
「守ろうとしてくれて……ありがとネ」