第9話~復讐の悪魔ベオウルフ~
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何体の悪魔を倒しただろうか、マヤが双剣を握る手が痺れるぐらい戦っていると、漸く貨車は生贄拷問室前の乗車場に到着した。
「……ほとんどダンテが倒してくれたよね……」
「まあ、それが本職だしな」
疲れの色を全く見せないダンテに拍手を送りたかったが、その元気すらマヤにはなかった。
それどころか、目の前には長い階段が……。
「はあ……。見ただけで疲れる……」
加えて熔解した熱い物質が辺りの温度を高める。
「アグニ、この熱……どうにかならない?」
「無理を言うな。こんなに大量の熱、我が力を持ってしてもどうにもならん」
「なら諦めます……」
ダメ元で言ったマヤの前に、水色がすっと現れた。
「ケルベロスのヌンチャク……?」
「持ってろよ。一応氷だから冷たいだろ」
差し出された三氷棍を手にすると、気持ちのいい冷気を感じる。
「ありがとう」
「武器がかさ張ってたから丁度良かったぜ。……中には何があるんだろうな」
「私としては平穏がいいなぁ」
「ハハッ、確かにな。……でも、この塔にそんな場所はなさそうだよな」
階段を登りながらダンテが言う。
拷問室と言うより、熔鉱炉のような場所に汗が吹き出る。
(ケルベロス……溶けちゃったりしないかな?)
そう考えたマヤはアグニを片手にし、アグニを背負っていた場所にケルベロスを仕舞った。
ダンテが重々しい扉を開けば、中から更に強い熱気が放たれる。
「わっ……!あっつぅ~……!!」
「まるで蒸し風呂だな。……おっ」
部屋の奥の台座に、さっきとは色の違う永劫機関が置かれていた。
「貰う物だけ貰って、さっさと出るか」
ダンテがそう言って永劫機関に手を伸ばした時だった。
「―――スパーダ……!!」
「え……?」
「スパーダ!!」
真上からした声が怒号に変わった瞬間、頭上から瓦礫が降って来る。
「きゃあああっ!!」
ダンテがマヤの真上に落ちて来た瓦礫を拳で割ると、続けて巨大な悪魔が降りて来た。
「わきゃあっ!?今度は何ーっ!?」
マヤの悲鳴が続く。
久しぶりに遭遇した巨大な悪魔を目の当たりにしたのだから、無理はないが。
独眼の悪魔が厳つい容姿に似合わない白い羽根を広げると、ダンテは瓦礫を砕いた手をひらひらさせながら呆れて言った。
「おいおい、ママからドアの使い方を習わなかったか?」
「……っ!匂う!!匂うぞ!!」
匂うと言われたダンテは自分の体を嗅ぐと、巨大な悪魔におどけて言い返す。
「そりゃあ悪かったな。今度からは香水でも付けとくよ」
「別に匂いなんてしないけど……?」
マヤも首を傾げると、背中のルドラが言った。
「あやつは……ベオウルフじゃ!!」
「ベオウルフ?えと……名前は聞いた事あるけど……確か悪魔じゃなくて、悪い竜を倒した英雄じゃあ……」
「マヤの世界ではそうなのか。こちらでは奴はスパーダにテメンニグルごと封印されたのじゃ」
「封印……。ネヴァンと一緒だけど……」
同じように封印された彼女との違いは、あからさまな憤怒。
「これは裏切りの匂いっ!!あの忌まわしきスパーダの……!!スパーダの血族、生かしてはおかん!!」
怒りに興奮し、荒げるベオウルフは光が血潮のように流れる腕で殴りかかる。
「きゃあああっ!?」
巻き添えを喰らう位置にいたマヤを抱き上げて交わすダンテは余裕ぶって笑う。
攻撃を交わされたベオウルフは、今度は四つん這いになって獣のように吠えた。
「す……すごく怒ってない!?」
「ハハハッ!父親のケツを息子が拭くか……。どっかで聞いたような話だな!」
ダンテがエボニーとアイボリーをクロスさせて怒気まみれの悪魔に向けた。