再会
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ビリヤード台やダーツが置かれたレストルームにゾンビが現れたが、そこは強引にビリヤード台を乗り越えてやり過ごすなど、ジャンヌはとにかく貯水室へ到達する以外の無駄な事をしなかった。
何せさっきの戦いのせいで、かなり時間を浪費してしまったのだ。
早くビリーを助けたい一心から、急ぐ気持ちが激しく強まる。
地下7階へ着くと、フォークリフトが置かれた庭と強い流れの水路が目に入った。
明かりのお蔭で水路は見渡しがいいが、ここにはビリーの姿はない。
やはり貯水室の方まで流されてしまったのだろうか。
(地図だと、この先の水槽室を抜けた先が貯水室だったわね……)
ビリーを助けられるまで、あと少し。
ジャンヌはまた走り出す。
水槽室、水槽室前通路の階段を足早に駆け抜け、貯水室の扉をジャンヌは勢いよく開いた。
「ビリーッ!!」
彼がいてほしいという懇願の思いで貯水室に飛び込むジャンヌが目にしたのは、流れのある場所に引っかかる人影……ビリー・コーエンの姿。
「ビリー!?」
一番近い足場の端まで駆け寄るものの、そこからでは到底ビリーに届きそうにない。
―――また足が震えた。
ハッキリと覚えている、幼い自分を飲み込んだ水への恐怖。
しかしそんなものより、もっと大きな恐怖をジャンヌは感じていた。
それは、ビリーを失う事―――……。
「っ……!!」
ジャンヌは震えた足のまま、全ての銃器を投げ捨てると水路に続く小さな梯子を降りる。
足首、膝、太股へと感じる水の感触が恐怖を煽って、今度は梯子を握る手までもが震え出した。
(お願い……!!震えないで、私の体……!!)
意を決して一気に水路に降りると、水位は彼女の身長とほとんど同じぐらいだった。
頭1つ高いだけだが、水流がぶつかって来る度に体はよろけて動きが強張る。
水へのトラウマがあるのだから、勿論泳げるはずがない。
それでもジャンヌはビリーの下へと向かった。
無我夢中に腕で水面を掻き分け、何度も彼の名前を心で呼びながら。
(ビリー……ビリー……!!)
やっとジャンヌの手がビリーに届いた。
しかしぐったりしたまま彼は動かない。
掴んだ腕を肩に回して足場へ戻るジャンヌの鼓動が、重く体中に響く。
(大丈夫、大丈夫……!)
自分にそう言い聞かせて梯子に手をかけた。
ビリーの腕を掴んだまま、器用に足場へ上がって彼の体を持ち上げる。
服が水を含んだせいもあるが元から筋肉質の体ゆえに、彼女1人で持ち上げるのも困難だったが、何とかビリーの体を仰向けにして寝かせた。
「ビリー!!しっかりして!!起きてビリー!!」
繰り返し肩を叩き、何度も呼びかけるジャンヌ。
それでも彼の返事はない。
……いや、目覚める気配すらない。
『ドクン……』
心臓が重たく鼓動した。
「嘘……よね?ビリー……」
蒼白した頬を撫でて震えた声で呟き、ビリーの口元に指を置くが呼吸は感じられない。
「っ……!」
(嘘……!嘘よ……!!)
信じたくない現実を認めたくないジャンヌはおもむろにビリーの胸板に耳を寄せた。
―――しかし、彼女が願う鼓動は聞こえる事はなかった。
「う……そ、い……いやぁ……!ビリー……!?ビリーッ!!っ……やああああああっ!!」
顔を伏せたジャンヌの阿鼻叫喚が水路に響く。
「だって……一緒にって……2人で必ず生きて脱出しようって……約束したじゃないっ!!」
どんなに叫べど、ビリーは指すらも動かさない。
(や、だ……!!嫌……!!)
全てが壊れたような、自らの世界を失った感覚に涙が絶えず流れた。
しかしそんな中、僅かな希望を抱く自分が存在した。
咄嗟にビリーの顎に手を添えて持ち上げ、鼻を押さえて自らが吸った空気を彼の口から送り込む。
(お願い……!!目を開けて……!!)
神に縋る想いで、繰り返しビリーに息を吹き込むジャンヌは次いで胸骨圧迫を始めた。
「ビリー……!こんなところで死なないで……!」
あの時、研究所の資料室で言われた事を思い出す。
『俺はまだやらなきゃいけない事がある。だからこんな場所で死んだりしない。……お前もだ、ジャンヌ。どちらかだけじゃダメだ。2人一緒に、ここから脱出するんだ』
「っ……自分でそう言ったじゃない!だから……!!」
―――死なないで……。