逆転/企画・AtoZ
成+御+矢
「タロット占い、だと?」
矢張のヤツに電話で呼びだされ指定された場所――成歩堂事務所に来てみれば、いきなり『占ってやるよ』ときたもんだ。
「矢張‥‥お前、マシスはどうしたんだよ。」
成歩堂が冷ややかな視線を向けて尋ねる。私も聞きたい理由だが、‥‥どうせ、こいつの場合は‥‥。
「いやー、マリナがタロット占いやってる男ってカッコイイって言うからさあ!」
‥‥やっぱりな。
「マシスは一旦、休業中。」
これはマシス降臨する日まで、そう遠くはないな。いつものことだが。
「で、そこそこに出来るようになったしよー。幼なじみとして格安でやってやろうと思ってな。」
「金取んのかよ!」
成歩堂が驚いた声を出しながら、矢張に食ってかかった。金を気にするとは、なかなか小さい男だ。それよりも私は“幼なじみ”という点の方が気になる。いつ幼なじみになったというんだ。私とオマエは。
「――まぁ、いいよ。好きにやってくれよ。‥‥で、何を占うんだ?」
矢張との言い合いに疲れたのか、諦めたのか、多分両方だろうが‥‥成歩堂は顔に手を当て溜め息混じりに聞いた。
「そうだなあ。‥‥御剣、オマエ占って欲しいことあるか?」
そう言われても困る。そもそも占い、というもの自体を私は信じてないのだ。血液型や星座などで左右される運勢などあるものか、と思ってしまうからだ。
しかし、強いてあげるとすれば‥‥。
「仕事運、だろうか。」
「うわあ、つまんねー。」
貴様が聞いたから答えただけだろうが。つまらない、とはなんなのだ。このフリーターは。
「御剣、顔怖いぞ。」
「ム。」
隣に座る成歩堂に指摘されて自分が睨んでいたことに気付いたが、こんなことで臆するような奴ではないのだ。矢張という男は。その証拠に、目線がしばしば合っていながらも同じトーンで喋り続けている。“仕事運なんてありきたりだろ”、“もうちょっと燃えるやつ選べよなあ”だの言いながら、何やら行動に移していた。
「‥‥つくづく、神経を逆なでることには定評がある男だな。」
短い溜め息をつきながら呟いて、腕を組んでソファの背によしかかった。全く、短気は損気とはよく言ったものだ。
「全くだよ。‥‥御剣はどうか知らないけど、ぼくなんて小学4年生から今までだぞ。」
頬杖をついて、先程私が発したくらいの小声で成歩堂が答えた。
確かに、小学校の同級生とは言っても、私が成歩堂や矢張に再会したのは数年前だ。それ以前は会っていない。――いや、会えなかった。
成歩堂と矢張には空白の時間がない。けれど、私と2人の間には空白の時間が存在する。なのにも関わらず、ずっと前から再会していたかのように接してくれるのは‥‥正直、嬉しかった。私の、検事・御剣怜侍という人間を壊した、どうしようもない破壊者でビックリ箱のようなとんでもない面倒な者たちだ。
「まあ、そんだけ長くいても、はた迷惑な奴としか分かんないけどさ。」
「なにコソコソ喋ってんだよ。俺も仲間に入れろよー」
「断る。」
‥‥ほら、また壊れた。
‥‥いや、違うな。正しく言えば壊されているのではなく、私の歯車が直されているんだ。あるべき道に戻る為、余計なものを排除して道を示す為に。
「「なに、笑ってんだよ。」」
言い争っていた矢張と成歩堂が同時に、しかも冷めた視線を送って言った。笑いたくもなるだろう。このような、当たり前の日常に馴染む日が来るとは、夢にも思わなかったのだから。
私は‥‥踏み出せたんだな。進むことも戻ることも出来ずにいた、あの場所から抜け出せた。背伸びも、する必要はなくなった。
「ま、いいや。それより結果が出たんだけどな‥‥」
「望むところだ。」
「いやいや、望むところだって、戦うわけじゃないんだから。いや、法廷は戦う場所だけどさ。」
どんな予想や結果だろうと構わない。私は私の信じる道を進ませて貰う。
このはた迷惑な破壊者どもが変わらずにいるならば、どんな未来が待ち構えていようとも‥‥
――私は止まるわけには行かないのだ。
占い《なるほどくんの結果》
成「ちなみにぼくの仕事運はどう?」
矢「何か、失うみたいだぞ。」
成「失う‥‥? なくすってことかな。」
御「証拠品とかな。」
矢「弁護士バッジとかな。」
成(笑えない‥‥)
「じゃあ、恋愛運は? 結婚とか。」
矢「むしろ、女難の相が出てる。」
成「‥‥しょ、証人や検事に泣かされるってことかな。」
御「また騙されるのかも知れん。」
成(好きに言いやがって‥‥)
「じゃ、じゃあ!金銭運は!?」
矢「最悪だな。」
成「どうなってんだよ! ぼくの未来は!」
「タロット占い、だと?」
矢張のヤツに電話で呼びだされ指定された場所――成歩堂事務所に来てみれば、いきなり『占ってやるよ』ときたもんだ。
「矢張‥‥お前、マシスはどうしたんだよ。」
成歩堂が冷ややかな視線を向けて尋ねる。私も聞きたい理由だが、‥‥どうせ、こいつの場合は‥‥。
「いやー、マリナがタロット占いやってる男ってカッコイイって言うからさあ!」
‥‥やっぱりな。
「マシスは一旦、休業中。」
これはマシス降臨する日まで、そう遠くはないな。いつものことだが。
「で、そこそこに出来るようになったしよー。幼なじみとして格安でやってやろうと思ってな。」
「金取んのかよ!」
成歩堂が驚いた声を出しながら、矢張に食ってかかった。金を気にするとは、なかなか小さい男だ。それよりも私は“幼なじみ”という点の方が気になる。いつ幼なじみになったというんだ。私とオマエは。
「――まぁ、いいよ。好きにやってくれよ。‥‥で、何を占うんだ?」
矢張との言い合いに疲れたのか、諦めたのか、多分両方だろうが‥‥成歩堂は顔に手を当て溜め息混じりに聞いた。
「そうだなあ。‥‥御剣、オマエ占って欲しいことあるか?」
そう言われても困る。そもそも占い、というもの自体を私は信じてないのだ。血液型や星座などで左右される運勢などあるものか、と思ってしまうからだ。
しかし、強いてあげるとすれば‥‥。
「仕事運、だろうか。」
「うわあ、つまんねー。」
貴様が聞いたから答えただけだろうが。つまらない、とはなんなのだ。このフリーターは。
「御剣、顔怖いぞ。」
「ム。」
隣に座る成歩堂に指摘されて自分が睨んでいたことに気付いたが、こんなことで臆するような奴ではないのだ。矢張という男は。その証拠に、目線がしばしば合っていながらも同じトーンで喋り続けている。“仕事運なんてありきたりだろ”、“もうちょっと燃えるやつ選べよなあ”だの言いながら、何やら行動に移していた。
「‥‥つくづく、神経を逆なでることには定評がある男だな。」
短い溜め息をつきながら呟いて、腕を組んでソファの背によしかかった。全く、短気は損気とはよく言ったものだ。
「全くだよ。‥‥御剣はどうか知らないけど、ぼくなんて小学4年生から今までだぞ。」
頬杖をついて、先程私が発したくらいの小声で成歩堂が答えた。
確かに、小学校の同級生とは言っても、私が成歩堂や矢張に再会したのは数年前だ。それ以前は会っていない。――いや、会えなかった。
成歩堂と矢張には空白の時間がない。けれど、私と2人の間には空白の時間が存在する。なのにも関わらず、ずっと前から再会していたかのように接してくれるのは‥‥正直、嬉しかった。私の、検事・御剣怜侍という人間を壊した、どうしようもない破壊者でビックリ箱のようなとんでもない面倒な者たちだ。
「まあ、そんだけ長くいても、はた迷惑な奴としか分かんないけどさ。」
「なにコソコソ喋ってんだよ。俺も仲間に入れろよー」
「断る。」
‥‥ほら、また壊れた。
‥‥いや、違うな。正しく言えば壊されているのではなく、私の歯車が直されているんだ。あるべき道に戻る為、余計なものを排除して道を示す為に。
「「なに、笑ってんだよ。」」
言い争っていた矢張と成歩堂が同時に、しかも冷めた視線を送って言った。笑いたくもなるだろう。このような、当たり前の日常に馴染む日が来るとは、夢にも思わなかったのだから。
私は‥‥踏み出せたんだな。進むことも戻ることも出来ずにいた、あの場所から抜け出せた。背伸びも、する必要はなくなった。
「ま、いいや。それより結果が出たんだけどな‥‥」
「望むところだ。」
「いやいや、望むところだって、戦うわけじゃないんだから。いや、法廷は戦う場所だけどさ。」
どんな予想や結果だろうと構わない。私は私の信じる道を進ませて貰う。
このはた迷惑な破壊者どもが変わらずにいるならば、どんな未来が待ち構えていようとも‥‥
――私は止まるわけには行かないのだ。
占い《なるほどくんの結果》
成「ちなみにぼくの仕事運はどう?」
矢「何か、失うみたいだぞ。」
成「失う‥‥? なくすってことかな。」
御「証拠品とかな。」
矢「弁護士バッジとかな。」
成(笑えない‥‥)
「じゃあ、恋愛運は? 結婚とか。」
矢「むしろ、女難の相が出てる。」
成「‥‥しょ、証人や検事に泣かされるってことかな。」
御「また騙されるのかも知れん。」
成(好きに言いやがって‥‥)
「じゃ、じゃあ!金銭運は!?」
矢「最悪だな。」
成「どうなってんだよ! ぼくの未来は!」
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