サイト移行時の試し文
これはページです、と彼女は言った。
聞かされた僕はというと「はあ」と何とも気の抜けた生返事するしかなかった。
「理解できましたか?」と彼女に問われ、静かに頷く。わかったような気もするし、わかってないような気もする――ということは黙っておくことにしたのだ。
僕は今、パソコン教室に来ている。理由はカンタン。パソコンについて学ぶためだ。
何を隠そう僕はパソコンが出来ない。世の中はスマホだなんだなんと『てくのろじー』というのに溢れているけど、僕としては電話が出来ればケータイとして十分機能してると思うし、年賀状印刷だって郵便局に頼めば済む。データ化やオンライン化とか言うけど書類が手元にあって、自分の字で書いた方が読みやすいし早く覚えるじゃないか。……という僕の理論は仕事においてどうでもいいいらしい。年下の上司からは、作業を効率的に行うのが仕事だと言われた。そして手書きの僕は淘汰され……あとは聞かないで欲しい。うう、ITだなんだよくそったれ。
ちなみに今習ってるのは『おふぃす』とかいう『そふと』らしい。全くもってわからん。
唯一わかったことは緑のやつは計算が強い理系みたいなやつで、青いやつは文書入力に適した文系のやつらしい。そして青いやつの、この真っ新な状態はページと呼ばれているらしい。
僕にはこれで十分お腹いっぱいなんだけど、彼女――パソコン教室の先生はまだまだ続ける。
「この点滅してる縦の線は現在入力しようとしている場所になります」
はあ、とまたも僕は生返事をして先生の説明をただただ聞いていた。