学校の帰り道、ぼくは何度も何度も2人にお礼を言った。どうしても、どうしても言いたかったし、伝えたかったから。
「もう、お礼ならいい。‥‥さっさと泣きやめバカモノ。」
みつるぎくんが、そう言ってぼくをにらむように見る。このキビしい目が、ぼくを助けてくれたときと同じで、怒ったネコみたいでコワいけれど‥‥優しくて。ぼくの世界はまたぼやけてきてしまった。
「う、うん‥‥」
もうナミダなんて出ないようにガシガシと目をこすった。
「あーあ。泣かしたー。みつるぎ! おマエ! 言いかたがキツいぞ!」
「なッ!ぼくが悪いのか!?」
やはりくんとみつるぎくんが、これをキッカケに言い合いを始めた。それが面白くて、楽しくて、ぼくは声を出してニコニコ笑った。
「やっと笑ったなー、おマエ!」
ガッチリと腕を首に回して、グイグイとしめるやはりくん。苦しいけど、こうして遊ぶのが楽しくて嬉しい。なのに、またナゼかナミダが出てきそうなのをこらえるように、ぼくはまた笑った。
「それよりさー、来週の遠足楽しみだよなあ! なあ、バナナはおやつに入るのか?」
「え。どうなんだろう。果物だから‥‥入らないんじゃないかな?」
あんなことがあったのに、なにもなかったみたいに友だちのように話してくれることにビックリした。けれど、ニカニカと笑う、やはりくんを見てぼくは少し考えて答えた。
「こんなくだらない質問にわざわざ答えなくていいのだぞ、成歩堂。」
「くだらないってなんだよッ! シカツモンダイだろッ!」
「どこが死活問題だッ!」
また言い合いを始めた2人を見て、ぼくは笑いながら思ったんだ。
『‥‥一生わすれないよ。』