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重たい金属の装置を頭から外し、僕は眠たい目を擦った。
最近は、ログアウトしたらそのまま眠ってしまうことが増えた。
才囚学園を模したこの建物の一室、僕が目覚めたあの教室とそっくりなこの部屋を見渡すと、もう誰も居なかった。
ゆっくりと固まった体を起こしながら、習慣のように自分が辿ってきた世界を振り返る。
まずは、この、現実世界のこと。
僕たちはモノクマによって、コロシアイに参加させられ、その最中にピアノを壊してしまった。
それによって、モノクマの子供という体で現れた、4人の楽器職人見習い。
僕たちはその4人に助けられ、ゲームの途中で才囚学園から脱出することができた。
僕たちを救うために、その4人が手に入れた力。
“最強の才能”によって、意識を失った4人を回復させるために、僕たちはプログラム世界であのコロシアイの再現を繰り返している。
どうして医者を頼らずにこんなことになっているかというと。
僕たちはコロシアイゲームを運営していたチーム、コロシアイゲームに熱狂していた視聴者に恨まれ、追われている身だからだ。
逃げ込んだ先は廃墟。
現実世界の発展とは裏腹に、管理も監視もされていない地域の、大きな廃墟を改造し、僕たちは才囚学園のような建物を作った。
超高校級の才能を持つ者が集まっているにしても、簡単な作業ではなかった。
それでも、この学園を望んでしまうのは、僕たちが他の居場所を知らない作り物......フィクションだからだろうか。
寝ても覚めても同じ教室。同じように見える才囚学園。
ここで僕たちは、入間さんの才能に頼ってプログラム世界を行き来している。
これは、以前にモノクマが準備し、入間さんが調整を施したプログラム世界とは違う。
...そう頭の中で振り返りながら、ふと首を傾げる。
違う、そうじゃなかった。
あれは一度、紗如ちゃん達のフリーズを放置して、プログラム世界の続きを見た時のこと。
プログラム世界の中のコンピュータールームで、モノクマが準備していたプログラム世界を発見し、それを入間さんが調整して、さらにそのプログラム世界に入った。
ああややこしい。
つまり、僕が“以前”と誤認していたプログラム世界は、プログラム世界の中にあるプログラム世界であり、現実の出来事では無いのだ。
ただ、今ここにあるコンピューターから入れる才囚学園は、現実の才囚学園を再現したものであるから、あのプログラム世界は本当に準備されていたのだと思う。
運営から盗み取った資料だけで、そこまで作り上げた入間さんの才能に感心する。
頭が痛くなってきたところで、僕は教室を出た。
そして、すぐ向かいにある超高校級のピアニストの研究教室に向かう。
本当に頭がおかしくなりそうだが、この学園は廃墟の中の現実世界であり、コロシアイの舞台となった才囚学園とは別の場所。再現した現実世界。
僕、大丈夫? 少し休もうかな。
とにかく、再現して作った研究教室の扉を開けて、僕はいつものように彼女の寝顔を見に来た。
ピアノと、楽譜を入れてある本棚。
そして、空いたスペースに並べられたカプセル型のベッド。
そこに、紗如ちゃんたち4人は眠っていた。
「あれ?」
ついと視線を横へ遣ると、ベッドのそばの壁に座り込んで、ゴン太くんが眠っている。
そして、ゆっくりと床に倒れそうになったところで、ハッと目を覚ました。
「あっ...おはよう、ゴン太くん」
彼は僕に気が付くと、体格に似合わず、子供のような仕草で目をこすった。
「...おはよう、最原君。いけない、こんなところで寝ちゃった...」
「ううん。仕方ないよ」
もしかして、いつも時間が合わないだけで、彼もよくここへ来ていたのだろうか。
彼の性格を考えれば、当然とも思えた。
僕はそのまま紗如ちゃんのベッドの傍に立って、顔に触れようと手を伸ばした。
「ゴン太、先に行ってるね」
ゴン太くんが背後を通り過ぎ、扉が閉まる音がする。
僕が伸ばした手は、カツンとプラスチックの表面に阻まれた。
透明のカプセル越しに、彼女は眠る。外の世界にはいろいろと便利な技術が揃っていて、それと入間さんの才能を組み合わせれば、彼女たちの命を管理するのは実に簡単であった。
また、プログラム世界に一緒に行くための装置も、意識の無い彼女たちのために改造してある。
植物のように眠っているとはいえ、彼女たちは生きている。
じっと紗如ちゃんを見詰めていると、時々、ため息のように大きく息を吐くのだ。それこそ、普通に眠っている時の寝息のように。
うっすらと吐息で曇るプラスチックを見る度に、彼女が愛しく思えた。
そろそろ、みんなが教室に集まってくる頃だ。
11回目のプログラム世界。
僕が、彼女の腕を諦める世界が始まる。
最近は、ログアウトしたらそのまま眠ってしまうことが増えた。
才囚学園を模したこの建物の一室、僕が目覚めたあの教室とそっくりなこの部屋を見渡すと、もう誰も居なかった。
ゆっくりと固まった体を起こしながら、習慣のように自分が辿ってきた世界を振り返る。
まずは、この、現実世界のこと。
僕たちはモノクマによって、コロシアイに参加させられ、その最中にピアノを壊してしまった。
それによって、モノクマの子供という体で現れた、4人の楽器職人見習い。
僕たちはその4人に助けられ、ゲームの途中で才囚学園から脱出することができた。
僕たちを救うために、その4人が手に入れた力。
“最強の才能”によって、意識を失った4人を回復させるために、僕たちはプログラム世界であのコロシアイの再現を繰り返している。
どうして医者を頼らずにこんなことになっているかというと。
僕たちはコロシアイゲームを運営していたチーム、コロシアイゲームに熱狂していた視聴者に恨まれ、追われている身だからだ。
逃げ込んだ先は廃墟。
現実世界の発展とは裏腹に、管理も監視もされていない地域の、大きな廃墟を改造し、僕たちは才囚学園のような建物を作った。
超高校級の才能を持つ者が集まっているにしても、簡単な作業ではなかった。
それでも、この学園を望んでしまうのは、僕たちが他の居場所を知らない作り物......フィクションだからだろうか。
寝ても覚めても同じ教室。同じように見える才囚学園。
ここで僕たちは、入間さんの才能に頼ってプログラム世界を行き来している。
これは、以前にモノクマが準備し、入間さんが調整を施したプログラム世界とは違う。
...そう頭の中で振り返りながら、ふと首を傾げる。
違う、そうじゃなかった。
あれは一度、紗如ちゃん達のフリーズを放置して、プログラム世界の続きを見た時のこと。
プログラム世界の中のコンピュータールームで、モノクマが準備していたプログラム世界を発見し、それを入間さんが調整して、さらにそのプログラム世界に入った。
ああややこしい。
つまり、僕が“以前”と誤認していたプログラム世界は、プログラム世界の中にあるプログラム世界であり、現実の出来事では無いのだ。
ただ、今ここにあるコンピューターから入れる才囚学園は、現実の才囚学園を再現したものであるから、あのプログラム世界は本当に準備されていたのだと思う。
運営から盗み取った資料だけで、そこまで作り上げた入間さんの才能に感心する。
頭が痛くなってきたところで、僕は教室を出た。
そして、すぐ向かいにある超高校級のピアニストの研究教室に向かう。
本当に頭がおかしくなりそうだが、この学園は廃墟の中の現実世界であり、コロシアイの舞台となった才囚学園とは別の場所。再現した現実世界。
僕、大丈夫? 少し休もうかな。
とにかく、再現して作った研究教室の扉を開けて、僕はいつものように彼女の寝顔を見に来た。
ピアノと、楽譜を入れてある本棚。
そして、空いたスペースに並べられたカプセル型のベッド。
そこに、紗如ちゃんたち4人は眠っていた。
「あれ?」
ついと視線を横へ遣ると、ベッドのそばの壁に座り込んで、ゴン太くんが眠っている。
そして、ゆっくりと床に倒れそうになったところで、ハッと目を覚ました。
「あっ...おはよう、ゴン太くん」
彼は僕に気が付くと、体格に似合わず、子供のような仕草で目をこすった。
「...おはよう、最原君。いけない、こんなところで寝ちゃった...」
「ううん。仕方ないよ」
もしかして、いつも時間が合わないだけで、彼もよくここへ来ていたのだろうか。
彼の性格を考えれば、当然とも思えた。
僕はそのまま紗如ちゃんのベッドの傍に立って、顔に触れようと手を伸ばした。
「ゴン太、先に行ってるね」
ゴン太くんが背後を通り過ぎ、扉が閉まる音がする。
僕が伸ばした手は、カツンとプラスチックの表面に阻まれた。
透明のカプセル越しに、彼女は眠る。外の世界にはいろいろと便利な技術が揃っていて、それと入間さんの才能を組み合わせれば、彼女たちの命を管理するのは実に簡単であった。
また、プログラム世界に一緒に行くための装置も、意識の無い彼女たちのために改造してある。
植物のように眠っているとはいえ、彼女たちは生きている。
じっと紗如ちゃんを見詰めていると、時々、ため息のように大きく息を吐くのだ。それこそ、普通に眠っている時の寝息のように。
うっすらと吐息で曇るプラスチックを見る度に、彼女が愛しく思えた。
そろそろ、みんなが教室に集まってくる頃だ。
11回目のプログラム世界。
僕が、彼女の腕を諦める世界が始まる。
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