靴を履き替えた
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それから真っ直ぐ、私は図書室の方へやって来た。
人気の無い廊下をもう一度見回して、誰も居ないことを確認して、いざ図書室へ。
「やっほー! 譜字平さーん!」
「ひゃっ」
思わず扉から飛び退いてしまった。一体どこから現れたのか分からないが、モノクマが図書室の扉を塞ぐように立っていた。
「もう〜そんな気軽に立ち寄られちゃ困るよ〜!」
「な、なに...?」
「ダンガンロンパはネタバレ禁止! アドベンチャーゲームでオチがネタバレなんて致命傷だよ!」
「あっ...ご、ごめんなさい...」
この図書室の奥の隠し扉について思い返す。断片的にではあるが、重要な関係者が立ち入る場所だと記憶している。だから、ここに来ればモノクマに会えると思っていた。
その記憶を辿ってきたせいで、コロシアイ参加者たちの推理の邪魔をしてしまうところだったのかもしれない。延いては、視聴者の。
想像して、ゾッとする。
見えもしないカメラを探してキョロキョロと首を動かしながら、中継への配慮が足りなかったかもしれないと後悔する。
全て見られている自覚を持たなければ、と思いながらも、腕を失ったことを思えばもう、どうでも良くなってしまう。
「ところで、何の用? キミみたいな才能も無いお子ちゃまに構ってる暇って、そんなにないんだよね〜」
「ごめんなさい、すぐに済みますので」
動じることなく答えると、モノクマは不思議そうに首を傾げた。
私は、1歩だけ近寄って、彼に訴え掛ける。
「外に帰らせてください。こんな腕で、もう、私にできることはありません。将来だって無いし、家族を頼らないと生活できないし、それに...」
「うん、別にいいよ?」
「え?」
「楽器職人の夢はもういいから家に帰りたいんだよね? 別にいいよ?」
あっさりと許可が出たことに拍子抜けしたが、それも当たり前の事だった。だって私は、ただの一般高校生で、コロシアイには全く関係ない。
ピアノの修理のために来たとはいえ、楽器職人見習いで、その中でも然して特別でもなかった。
「あ〜あ、側葉良さんじゃなくてまだ良かったよぉ!」
「え? 合歓?」
「だって彼女すっごい美人でしょ? ただの見習いの子でいいのに、わざわざあんな綺麗な子連れてくるから、もし抜けるって言い出したらどうしようかと思ったんだよ〜。でも譜字平さんならよかった! 簡単に代わりが見つかりそうだもんね〜!」
「...そう、ですね」
別に。別に。あんな可愛い子と張り合う気なんてないけど。
それにしたって、周りの誰かより可愛く思われたい、年相応の承認欲求くらいはある。
ううん。楽器職人という夢が無くなった今、より欲求は強くなったかもしれない。
合歓みたいな、とびきりの美人だったらよかったのに。
居るだけで愛される美人だったら、私、何も出来なくてもここに居られたのかな?
...嫌だな。せっかく、琴都たちと友達になれたのに。
もっと楽器について話してみたかった。一緒に演奏したり、競ったりしてみたかった。
ううん、楽器のことだけじゃない。もっと仲良くなったら、一緒に遊んだり、恋話したり、出来たのかな。
「待てよオラァ!!」
「ひゃっ!?」
突如、背後の階段の方から声がして、振り返る。