神社の守り神様
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中学二年生の終わりに引っ越しが決まった。
仕事の都合、いわゆる転勤だ。
すぐに受験が控えていたが、話し合った結果みんなで引っ越すことにした。
そのために高校も一貫でつながっている中学校へ転校することになる。勉強は好きではないけど成績は悪くない。簡単な入試と先生からの推薦もあり、思いのほかすんなり決まった時は胸を撫で下ろした。
まだ衣替えができないとはいえ、日中は半そででも少し暑いくらいだ。
大きめのリボンがついたお気に入りの帽子を片手に玄関で待機しているが、中々両親はやってこない。
「ね~まだー?!」
「ついでに挨拶回りしたいから荷物まとめてるのよ~!」
引っ越しが決まった時、すぐに地元の神社へ挨拶をしに行こうと話していた。
前に住んでいたところでも何かある度に地元の神社へ挨拶しに行っていたので、これは我が家の風習みたいなものだ。
「なんで昨日のうちに用意しないのさー!」
「もうちょっと、あと五分だけ!」
私は早く新しい土地の神様に挨拶をしたくて何度目かの呼びかけをするが、その度にあと五分と言われ、結局何分待ったかわからない。
引っ越してきたのは昨日の夕方、夕飯を食べお風呂に入り寝るだけで精一杯だった。だから今日のうちにご近所さんの家を周りたいというのはわかる。しかし、ご近所さんよりも土地神様からの印象がすでに悪いのでは、と気になっていた。家が決まった時点で挨拶できていないし、当日ももちろん行くことができなかったからだ。
「も~!先に行くからねー!!」
待ってよ、そう聞こえてくる声を無視して玄関の扉を開けた。
視界に入ってくる景色がいつもと違い、ここで生活していくんだなと改めて感じる。
一度だけ大きく深呼吸をし、歩き出した。
場所は地図をよく見てきたので覚えている。家を出て右に曲がり、またすぐに左に曲がってからひたすら道に沿って歩けば左手にあるはずだ。
少し山の方にあるため景色が変わらず同じ道をひたすら歩いていると、少しばかり不安になってしまう。そろそろついても良い頃だと、何度か後ろを振り返りつつ進んで行けば階段が見えた。
ああ、ここだ。
木が生い茂り見逃してしまうところだった。階段を見上げるが神社は見えない。ここだけ周りと空気が違う気がして体がゾクっと震えた。それでも嫌な感じはしなかったので進むことにした。神社特有の階段、ボコボコで高さもバラバラ。踏み外してしまわないようゆっくりと踏みしめながら登った。
登りきるとすぐに見えた鳥居。傍には狐の石像が二体座っている。
狐……ここでは狐が守り神なんだ。
前に住んでいた場所では兎が守り神だった。私は動物の使いに縁があるらしい。
その場から見回すと全体的に古ぼけていて、まるで漫画にでてくるような神社だなと思った。しかしお酒が置かれているので、放置されているわけではなさそうだ。地面に置いてある食べ物っぽいものはなにか謎だが、それもお供えなんだろう。きっと地元のみんなから愛されているんだと感じた。そのおかげで神様のパワーも保たれているのだろうか、強いなにかが体にひしひしと伝わってくる。
ぴちょん、と雫が落ちる音が聞こえハッとなる。
そうだ、挨拶しに来たんだ。音のした手水に寄ろうと足を進めるが、今まで感じたことのない独特な雰囲気にのまれそうになる。足元がふわふわして、本当にこの神社はあるのか不思議な感覚が襲う。