波と踊れ
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私は社会人一般女性、普通の人間。定時退社してすたみな太郎に行くつもりで、張り切ってパソコンで事務作業を進めていた。仕事に夢中になっていた私は、背後から近付いてくる謎の光に気づかなかった。私はその光に石化させられ、目が覚めたら──コナンの犯人になっていた!! 石化からの復活の際、肌全体にヒビが入った挙句頭髪を失ってしまったのだ。とりあえずスーパー科学マン石神千空に指示を仰ぎいろいろ手伝うことに……。
見た目は犯人、中身は凡人。その名は祭林ズンド子!
⚓︎ ⚓︎ ⚓︎
この石の世界で役に立てるような特技・特性を持たない私は決まった役割がない。崩れた石像の組み合わせや、食料採集、クラフトの単純作業など、その場その時の状況に合わせて人手が必要なところの手伝いをしている。だが、無茶苦茶に器用だったり体力が溢れている子たちが既に適材適所に居て、私の数倍いや数億倍の仕事量を圧倒的速さでこなしている。はたしてこの手伝いは手伝いになっているのだろうか。助かると言ってもらえてるし現状に不満もないけれど、このままでいいのだろうかと考えながら過ごしている。よくはないよな〜。
比較的小さめ軽めの木片などをエッサホイサドッコイショと運んだ後、居合わせた女の子たちと昼食を囲んでいる時に七海龍水の話題になった。つい最近船作りが始まり、船長として起こされて仲間入りした青年だ。どうやら仲間と言い切れない動きをしているようだがそれは置いておいて、彼にとっては女は皆美女らしい。ふーん。
「私も美女……ってコト!?」
「はっはー! もちろんだ!」
冗談のつもりが、声高々に海賊帽の男が横から生えてきて、指を鳴らし肯定してきた。七海龍水だッ!
「女たちは皆美女だぜ。貴様もだ!」
真っ直ぐな力強い瞳に鼓動が祭囃子を奏でる。遠目にしか見たことがなかったけれど……ふーん、かっこいいじゃん……。すごく背が高くて大樹くんほどではないががっしりしていそうな印象の体だ。精悍な顔立ちで、雄々しげな眉から口元あたりまでかかる長い前髪と自信溢れた笑みから覗く尖った犬歯が眩しい。思わず見惚れていると女子たちの目が光るのを感じて我に返った。
「ちが、違うから! 違うから!!」
ひときわ目を輝かせこそこそ黄色い声を上げている石神村のキラキラ三姉妹に、手と首を振りできるだけ小声で否定して、七海龍水に向き直る。
「あはは、嬉しいけどさすがに私は無理があるでしょ」
だってほら、全身ヒビ割れで真っ黒のハゲだよ。よく見て! やっぱ見ないで! 見るな!!
「何を言っている? ヒビが広範囲に残ったのは事実だが、それも含めて全て美しいだろう」
違うか? とさも当然かのように続けられて思わず顔を背ける。視界が滲みだしたからだ。動揺するな、落ち着けズンド子、大人の余裕を見せつけろ。
「ハヒィ〰〰、ハフゥ〰〰……ごめん風が呼んでるからそろそろ行かなきゃごちそうさまでしたごめんあそばせオホホホ!」
食べかけの焼き魚の串を握ったまま上品かつ足早にその場を離れた。先ほどの言葉が頭の中をぐわんぐわん揺する。ヒビも含めて全て美しい? お世辞にしては真っ直ぐすぎる瞳が目に焼き付いて離れず、涙がドババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババブバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババブリババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッと溢れてきた。忘れたくても忘れられない復活初日の号泣会見と周りの困惑を経て、もう二度と──はきっと無理なのでできるだけ気にしない泣かないと決めたのに。
人目につかないよう人通りが少ない方に行き大きな木に背中を預けて座り、目元を拭って魚にかぶりつこうと大口を開けたが、よく通る声が食事の続きを阻んだ。
「ズンド子」
「!?」
口を開けたまま右側へ振り向くと七海龍水がこちらへ歩いてきており、慌てて顔を反対へ向け気配を消し背後の木と同化するも、木と仁王立ちの彼に挟まれ逃げられないことを悟る。1メートルくらい距離を置いてくれているのにこの圧よ。いやね、噂から思っていたより高圧的ではないけれどやっぱりこう、圧迫感があるのよ。
「何でしょうか……」
「俺の言葉で泣いている美女を放っておけん」
「………………別にそんな、め、目に魚の骨が刺さっただけなんで……あと申し訳ないけど、美女美女貴様は美しい是非俺と結婚して生涯を共にしてくれないか好きだ愛してる貴様は美しいなんて言われても困るのどこがどう美しいか説明つかない状態なの自覚してるから」
フゥン。息をつくように呟いてじっと私を見下ろす輝かしい男は小首を傾げた。
「貴様の美しさに理屈が必要か?」
先ほどと同じ力強い目が真っ直ぐに心臓を射抜く。鼓動の祭囃子と共に変な汗がピーヒョロ出てきた。
私はマーモットそっくりに叫び声を上げて今度こそ逃走した。後ろから「もうすぐ雨が降るから早めに戻れ」と呼びかけられたが、素直に聞き入れる余裕はない。
やばいやばい好きになる!
瞬足を履いた子どもに負けないくらい無我夢中で走りコーナーで差をつけ、戻り道がわからなくなった挙句雨に降られてしまった。びしょ濡れでハアハア言いながらなんとか拠点に戻った途端雨が止み、雨粒が光るテントの群れの一つから七海龍水が顔を出して目が合う。逃げ出した手前、非常に気まずい。鼓動も相変わらずピーヒョロドンドン祭囃子を元気に奏でてくれるので一刻も早く立ち去らなければ。
「今戻ったのか。雨が降ると言っただろう」
「これは雨じゃない! 汗! 汗だから!」
テントから出た彼は少し眉間に皺を寄せ距離を詰めてこようとするのでじりじり後ずさっていると、両脇から何者かに腕を捉えられた。このやわらかな感触は女子ッ! この華やかな香りはルビィちゃんとサファイアちゃんッ! あまりの香しさに鼻の穴の直径が5メートルを記録。
「ほらこっちこっち」
「風邪引く前に着替えなきゃ」
紛うことなき美女二人に腕を組まれ連れて行かれる。美女二人に挟まれたことにより私もつられて美女になりそう。そして到着したのは着替えが置いてあるテント……ではなく丸太を積み重ねている物陰で、待ち構えていたガーネットちゃん共々三人に取り囲まれた。
「え?」
「で、どうだったの!?」
「え?」
私が食事の場を去り追いかけようとした杠ちゃんを引き止め七海龍水が席を外したのを、三人でこっそり後をつけ二人きりで話しているのを見ていたとのこと。話の内容までは聞こえずマーモットの叫びしか聞こえなかったようだけど。
彼氏が欲しいはずの三人は人の恋話に興味津々みたいだ。誤魔化しは効かず最終的には違くなかったと自白させられ、それを聞いたキラキラ三姉妹は一斉に期待と歓喜が混ざった声を発した。ストーンワールドではよほど恋の話題に飢えているのか一部の若い女子たちには一瞬で知れ渡った。ちなみに故意に噂を広められたなどではなく、私のあからさますぎる態度が原因だ。この騒ぎは三日三晩続いた。
なるほどね。こんなに話題になるなら、あの眩しすぎる男の主張は正しいのかもしれない。
見た目は犯人、中身は凡人。その名は祭林ズンド子!
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この石の世界で役に立てるような特技・特性を持たない私は決まった役割がない。崩れた石像の組み合わせや、食料採集、クラフトの単純作業など、その場その時の状況に合わせて人手が必要なところの手伝いをしている。だが、無茶苦茶に器用だったり体力が溢れている子たちが既に適材適所に居て、私の数倍いや数億倍の仕事量を圧倒的速さでこなしている。はたしてこの手伝いは手伝いになっているのだろうか。助かると言ってもらえてるし現状に不満もないけれど、このままでいいのだろうかと考えながら過ごしている。よくはないよな〜。
比較的小さめ軽めの木片などをエッサホイサドッコイショと運んだ後、居合わせた女の子たちと昼食を囲んでいる時に七海龍水の話題になった。つい最近船作りが始まり、船長として起こされて仲間入りした青年だ。どうやら仲間と言い切れない動きをしているようだがそれは置いておいて、彼にとっては女は皆美女らしい。ふーん。
「私も美女……ってコト!?」
「はっはー! もちろんだ!」
冗談のつもりが、声高々に海賊帽の男が横から生えてきて、指を鳴らし肯定してきた。七海龍水だッ!
「女たちは皆美女だぜ。貴様もだ!」
真っ直ぐな力強い瞳に鼓動が祭囃子を奏でる。遠目にしか見たことがなかったけれど……ふーん、かっこいいじゃん……。すごく背が高くて大樹くんほどではないががっしりしていそうな印象の体だ。精悍な顔立ちで、雄々しげな眉から口元あたりまでかかる長い前髪と自信溢れた笑みから覗く尖った犬歯が眩しい。思わず見惚れていると女子たちの目が光るのを感じて我に返った。
「ちが、違うから! 違うから!!」
ひときわ目を輝かせこそこそ黄色い声を上げている石神村のキラキラ三姉妹に、手と首を振りできるだけ小声で否定して、七海龍水に向き直る。
「あはは、嬉しいけどさすがに私は無理があるでしょ」
だってほら、全身ヒビ割れで真っ黒のハゲだよ。よく見て! やっぱ見ないで! 見るな!!
「何を言っている? ヒビが広範囲に残ったのは事実だが、それも含めて全て美しいだろう」
違うか? とさも当然かのように続けられて思わず顔を背ける。視界が滲みだしたからだ。動揺するな、落ち着けズンド子、大人の余裕を見せつけろ。
「ハヒィ〰〰、ハフゥ〰〰……ごめん風が呼んでるからそろそろ行かなきゃごちそうさまでしたごめんあそばせオホホホ!」
食べかけの焼き魚の串を握ったまま上品かつ足早にその場を離れた。先ほどの言葉が頭の中をぐわんぐわん揺する。ヒビも含めて全て美しい? お世辞にしては真っ直ぐすぎる瞳が目に焼き付いて離れず、涙がドババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババブバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババブリババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッと溢れてきた。忘れたくても忘れられない復活初日の号泣会見と周りの困惑を経て、もう二度と──はきっと無理なのでできるだけ気にしない泣かないと決めたのに。
人目につかないよう人通りが少ない方に行き大きな木に背中を預けて座り、目元を拭って魚にかぶりつこうと大口を開けたが、よく通る声が食事の続きを阻んだ。
「ズンド子」
「!?」
口を開けたまま右側へ振り向くと七海龍水がこちらへ歩いてきており、慌てて顔を反対へ向け気配を消し背後の木と同化するも、木と仁王立ちの彼に挟まれ逃げられないことを悟る。1メートルくらい距離を置いてくれているのにこの圧よ。いやね、噂から思っていたより高圧的ではないけれどやっぱりこう、圧迫感があるのよ。
「何でしょうか……」
「俺の言葉で泣いている美女を放っておけん」
「………………別にそんな、め、目に魚の骨が刺さっただけなんで……あと申し訳ないけど、美女美女貴様は美しい是非俺と結婚して生涯を共にしてくれないか好きだ愛してる貴様は美しいなんて言われても困るのどこがどう美しいか説明つかない状態なの自覚してるから」
フゥン。息をつくように呟いてじっと私を見下ろす輝かしい男は小首を傾げた。
「貴様の美しさに理屈が必要か?」
先ほどと同じ力強い目が真っ直ぐに心臓を射抜く。鼓動の祭囃子と共に変な汗がピーヒョロ出てきた。
私はマーモットそっくりに叫び声を上げて今度こそ逃走した。後ろから「もうすぐ雨が降るから早めに戻れ」と呼びかけられたが、素直に聞き入れる余裕はない。
やばいやばい好きになる!
瞬足を履いた子どもに負けないくらい無我夢中で走りコーナーで差をつけ、戻り道がわからなくなった挙句雨に降られてしまった。びしょ濡れでハアハア言いながらなんとか拠点に戻った途端雨が止み、雨粒が光るテントの群れの一つから七海龍水が顔を出して目が合う。逃げ出した手前、非常に気まずい。鼓動も相変わらずピーヒョロドンドン祭囃子を元気に奏でてくれるので一刻も早く立ち去らなければ。
「今戻ったのか。雨が降ると言っただろう」
「これは雨じゃない! 汗! 汗だから!」
テントから出た彼は少し眉間に皺を寄せ距離を詰めてこようとするのでじりじり後ずさっていると、両脇から何者かに腕を捉えられた。このやわらかな感触は女子ッ! この華やかな香りはルビィちゃんとサファイアちゃんッ! あまりの香しさに鼻の穴の直径が5メートルを記録。
「ほらこっちこっち」
「風邪引く前に着替えなきゃ」
紛うことなき美女二人に腕を組まれ連れて行かれる。美女二人に挟まれたことにより私もつられて美女になりそう。そして到着したのは着替えが置いてあるテント……ではなく丸太を積み重ねている物陰で、待ち構えていたガーネットちゃん共々三人に取り囲まれた。
「え?」
「で、どうだったの!?」
「え?」
私が食事の場を去り追いかけようとした杠ちゃんを引き止め七海龍水が席を外したのを、三人でこっそり後をつけ二人きりで話しているのを見ていたとのこと。話の内容までは聞こえずマーモットの叫びしか聞こえなかったようだけど。
彼氏が欲しいはずの三人は人の恋話に興味津々みたいだ。誤魔化しは効かず最終的には違くなかったと自白させられ、それを聞いたキラキラ三姉妹は一斉に期待と歓喜が混ざった声を発した。ストーンワールドではよほど恋の話題に飢えているのか一部の若い女子たちには一瞬で知れ渡った。ちなみに故意に噂を広められたなどではなく、私のあからさますぎる態度が原因だ。この騒ぎは三日三晩続いた。
なるほどね。こんなに話題になるなら、あの眩しすぎる男の主張は正しいのかもしれない。