ロケット団の勝手極まりない発言に仰天したメグミは2人を睨んだ。
「何をそんなに驚いてんだよ。別にロケット団に入れって言ってる訳じゃねぇんだし……」
「だからって……!いきなり人を呼び出しといて『ここから出てけ』だの『もう帰れ』だの言われて、『はい、分かりました』なんて言う訳ないでしょ!!第一、人にお願いする身なんだから、こっちに降りて来なさいよねっ!!」
木の上でしれっと言うブソンと隣にいるバショウに怒鳴った。
言い分は正しいと判断したのはバショウで、まずは彼から飛び降り、続いてブソンが着地する。
「これで満足ですか?」
「ご丁寧にどうも。……だけど、どういう風の吹き回しなの?ポケモンを返すだなんて……」
「もう人質は必要ねぇし、もしボールかポケモンに発信機でも付けられてたら、堪ったもんじゃないからな。嬢ちゃんこそ、礼の1つぐらい言ってくれてもいいんじゃねぇのか?」
思わぬ切り返しにメグミはたじろぐ。
「俺達が上手くやってなきゃ、タマゴは勿論……嬢ちゃんのポケモン全部がナナミの実験材料にされてたんだぜ?」
「そ、それは……」
その通りとは思うものの、いざ礼を言うとなるとやはり恥ずかしい。
情けなく唸っていると、久方ぶりにバショウが口を開いた。
「ところで……その腕はどうしたんです?」
「え?あ、ああ……、研究所の火事で火傷しちゃって……。包帯はしてるけど、大袈裟に見えるだけだよ」
平気だと主張するようにメグミは両腕を使ってガッツポーズをするが、それは空元気にも見えてしまう。
「……無理はすんなよ。んじゃあ……話も済んだ事だし、ここらでオサラバだな」
メグミに背を向けたブソンとバショウは丘を下ろうと歩き始めた。
「ま……待って!まだ聞きたい事はたくさん……!」
「……申し訳ありませんが、これ以上あなたに話す事も、時間もないんです」
謝罪の中に冷たさを含んだオーラを放つバショウ。
メグミは伸ばした右手を引っ込め、左の手で包むように手を重ねた。
「……分かった……」
晴れない気持ちのまま呟いた言葉。
ブソンはそれを聞くとサングラスをかけ直して『じゃあな』と、彼女を背にしたままでひらひらと手を振った。
手を振り返す事は出来なかった。
お礼の言葉すら伝えられなかったのだから……。