―――地下闘技場のバトルフィールドに立つのは白い服を纏ったメグミ。
しかし何故か使用ポケモンはバショウとブソンのポケモンで、彼女の表情も決していいものではなかった。
何故メグミがロケット団のポケモンでバトルをしているのかと言うと、彼女は着替えが終わるなり、唐突に『さっき取ったデータに不備があったから、またバトルをしてくれ』と言われた。
最初は勿論断ったが、何せモンスターボールなどの所持品は全て奪われている為、否応なしに了承する羽目になってしまったのだ。
「……ねえ、あと何回バトルすればいいの?」
連戦で疲れたのか、メグミの言葉に気力はなかった。
「そうですね……。データの採取はこのくらいにしましょう」
これを聞いたメグミはやっと胸を撫で下ろす事が出来、静かにハガネールをボールへと戻した。
「ご苦労様です。お蔭で大分データが取れました」
「まっ、ここはロケット団の中でも軟弱で有名な部隊だから、嬢ちゃんには物足りなかっただろうけどな」
ブソンはからかうように褒めちぎるが、返って来た反応は冷遇そのものだった。
いつもの生き生きとした面影はまるでなく、別人のように沈んでいるのが分かる。
「どうした?随分つれねぇな」
「……何でもない……。それよりもこれ……返すね……」
借りていたボールを返す時の仕種も沈んだ様子だった。
その時……。
「……どっかで見た事あると思ったら……やっぱりお前達だったか」
聞き慣れない声に振り返るメグミと顔を上げるバショウとブソン。
その先に立つのは、褐色の髪の端正な顔の男だった。
彼もまた、バショウ達と同じ“匂い”がする。
「久しぶりだなバショウ、ブソン。どうやら任務は一先ず終わったみたいだな」
そう言って男はメグミに視線をずらす。
「……へえ、君がブソン達が連れて来た子か……。俺は情報工作部隊長のイッサ。バショウとブソンとは同期って奴だな。以後宜しく、お姫サマ」
紳士のように胸に手を当て頭を下げるという、ロケット団ぽくない態度をとるイッサと名乗る男にバショウが問う。
「……何故情報工作部のあなたがこんな所に?」
「ああ。俺もお前達と同じ任務を頼まれてな。……悪いなお姫サマ、ちょっと失礼するぜ」
イッサはブソン達の下へ駆け寄り、ポケットから出した紙を広げて真剣な顔付きで何かを相談を始めた。
そんな彼らを見つめるメグミは、ほんの少しの安堵感から静かに息を吐く。
しかしやっと落ち着いたのも束の間、先程のバトルの対戦相手である隊員達にあっという間に周りを囲まれてしまった。
「さっきのバトルすごかったぜ!一体どんな風に鍛えればあんなに強くなれるんだ!?」
「あの2人のポケモンを使いこなすなんてすごいなぁ!」
「流石はエリートトレーナーだよな~」
「バーカ、それを言うなら次期ジムリーダーだろ!」
「えっ……?あの……ちょっと……!?」
一度にたくさんの言葉を投げかけられて戸惑うメグミ。
どうやらこの部隊の隊員達からは大いに歓迎されているようだ。