遅れて到着した警察のポケモン達が消火活動を始めた頃、アキラはメグミを安全な場所へと運んでいた。
森の中を少し入った所に立つ大きな木の下に決めてメグミをそこに降ろすと、自分もその向かいの位置に屈み、まだ彼女の手首の縛られたままのロープを外しにかかる。
その際、メグミの左腕に酷い火傷の痕があるのに初めて気づき、胸を痛ませた。
「……ごめんな……」
守れなかった事を悔やんで呟いた瞬間、彼女の瞼がゆっくり開けられた。
まだ合ってないピントを直す為に目を閉じて再度視界を開こうとするが、久しい太陽が眩しいのか、なかなか見開く事が出来ないようだ。
しばらくして、目の前に座る緑の少年をぼんやりと見つめると少し驚いたように口を開いた。
「……アキラ……?」
確かめるように細い指先はアキラの頬の上を繰り返し往復する。
メグミへの歓喜や謝罪などの様々な想いから、アキラはその手をそっと握って視線を彼女から下の地面に向けた。
「メグミ……、ごめん……な。つらい目に遭わせて……」
それを始めに、アキラはかつて相棒のサンドに吐き出した悔恨をメグミに伝えようとした。
「俺が弱くなければっ……!もっと強ければ……!!あの時メグミを1人で行かせなきゃ……こんなっ……!!」
ぐしゃぐしゃの脳内の言葉を揃えずそのまま口にする。
いっその事、自分を素行を責めてほしいぐらいだ。
そう思っていたのに、メグミは決してアキラを責めようとはしなかった。
それどころか彼女は穏やかな面持ちで
「……アキラ。顔上げて……ね?」
と優しく囁いた。
重たい頭をゆるゆると上げても彼女の顔を見る事は出来ず、アキラの視界は草の海だけが埋める。
顔は見れずとも握った手を放さずにいるのは、まだ思考が纏まってない表れのようだ。
そんなアキラの弱気な挙動から心の内を理解したメグミは、不意に彼の胸に飛び込んだ。
「!」
アキラの視界は若草色から一転、海のような深い青色に染まった。
「……怖かった……」
ぽつりとメグミは呟いた。
「アキラがいなくて……もう会えないんじゃないかって……不安で堪らなかった……。……けど、もう平気だよ……」
弱々しく彼の服を握るメグミは続ける。
「……アキラは弱くなんかないよ。だってこうして助けに来てくれたんだもん。……私、きっとアキラが助けに来てくれるって信じてた……」
今の自分に優しい言葉はつらいと思い込んでいたが、そんな事はなく、寧ろ温かい気持ちが広がっていくのをアキラは感じた。