外から見ただけの研究所はとても小さく世辞でも綺麗とは言えなかったが、実は本当の基地は地下に存在していた。
まず偽の研究所に通されたバショウ達は簡単に視察をする。
場合によっては彼らも研究員に成り済ます必要があるからだ。
「カムフラージュの割に結構凝ってるな。ニセの研究員もいるとは……」
「研究内容も、万一警察共が来ても自然な物にしてある。この研究所ならどんなにガサ入れされても問題ない」
「……確かに、これらからロケット団の情報が漏れる心配は一切ないでしょうね」
バショウは近くにあったレポートに目を通して言った。
そのタイトルは『空の力が宿るカムラの実について』や『進化の石の解析』などといった、ごく一般的なものばかりだ。
「そういう事だ。さて、こんな所よりも私が見せたいのはこっちだ」
次にナナミは倉庫へと案内するが実はこれも擬装で、本当は倉庫自体が地下研究所へのエレベーターになっていた。
ドアを閉めるとスイッチ下の鍵穴に妙な形をしたキーを差す。
「地下の研究所へ行くにはここを使わなければならない。他の経路はないので、気をつけてくれたまえ」
エレベーターは微かな振動を長く持続させて下へ下へと降りて行く。
そしてその時間に比例して、バショウの仮説が確かなものになる。
「まさか研究所の規模は地下に拡大しているのですか?」
この問いにナナミはニヤリと嗤う。
「そうとも。地下研究所はざっと地下10階はある。公にできない以上、基地は地下に広げるしかないからな」
「そこまでやるとはな……。恐れ入ったぜ」
驚嘆の声を上げるブソンは頭の上で腕を組んで壁に寄りかかった。
「私は研究の為なら何だってやるさ。何だってな……」
ナナミが不気味に微笑して呟いた丁度その時、エレベーターが到着の合図を鳴らした。
「着いたようだな。このフロアは君達専用だ。好きに使っていいぞ」
「……待遇が良すぎて言葉が出ませんね……」
ここまでされた前例がない為か、バショウは彼の行動に不信感を抱き始めていた。
「私はそうまでして任務成功を願っているんだ。では作戦内容について話そう。司令室に来てくれたまえ」
「……?」
少し腑に落ちないままの2人だが黙ってナナミの後ろをついて行った。