「メグミ!!そこから逃げろ!!」
アキラが叫ぶがメグミの足は震えるだけで動こうとしない。
一気に迫る闇のオーラに恐怖し、立ちすくんで動けないメグミが悲鳴を上げた瞬間、港に初めて聞く声が響いた。
「エーフィ!リフレクター!!」
直後、メグミの前に淡い紫が現れると、突然出現した壁に突っ込んだウソッキーはまともに吹き飛び、目を回して倒れた。
「えっ……?」
てっきり攻撃を受けると思っていたメグミは驚いて目を見開くと、そこに存在したのは自分を守るように立つ太陽ポケモンのエーフィと、エーフィが作り出した光る壁。
「うげげっ!?」
「ミ、ミラーボ様!?このエーフィはまさか……!!」
ヘボイとトロイがエーフィを見て狼狽し、危険を予知して大きく慌てだす。
「まだこんな事をしていたのか、ミラーボ」
声のする方を向けば、そこにはメグミの髪色にも負けないくらい鮮やかな青いコートの少年がいた。
透き通る鋭い金色の瞳でキッと敵であるミラーボを睨む。
「お、お前は~っ!?ま……またオレの邪魔をする気かぁ!?」
少年の姿を目の当たりにして動揺したのか、ミラーボの口調が荒く崩れる。
「その言葉、そっくり返すぜ」
少年の足元のブラッキーも黄色の模様を光らせてミラーボを威嚇する。
「クソクソクソ~ッ!!ヤツが現れたのは計算外だ!!ここは撤収だっ!!」
悔しさを露にするミラーボはさっさとポケモン達をボールに戻すと、すごいスピードで走り去って行ってしまった。
「ミ、ミラーボ様ぁ!?置いていかないで~っ!!」
バショウとブソンに倒されたポケモンをボールに戻し、大慌てでトロイ達も逃げ帰って行く。
あっという間に流れる謎に継ぐ謎のラッシュに全員が呆然とする。
「結局なんだったんだ……あのアフロ野郎……」
目的の分からぬまま去った敵、ミラーボ。
それを追い払った少年がメグミ達に近づいて来た。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとう……!」
「礼ならいらない。……それよりも、ミラーボと何があったのか教えてほしい」
それなら……とメグミが事情を話そうとすると、少年との間に巨大な壁が現れた。
隔てるようにして立つブソンは、少年を威嚇するように睨む。
「今の奴を知ってんのか?……いや、俺が聞きてぇのはそんな事じゃねえ」
少年はブソンの威嚇をものともせず、彼を黙って見つめる。
まるでブソンが言いたい事を知っていて、それを待つかのように。
「テメエ……俺達の敵か?」
ブソンの直球を予感していた青いコートの少年は『やっぱり』といった顔で答える。
「難しい質問だが……これだけは言える」
出会ってほんの数秒で敵かと聞かれれば、誰だって返事に困るだろう。
敢えて少年が出した返答は……。
「今お前達が戦っていた奴……ミラーボは俺の敵だ」
肯定でも否定でもない答えに、質問したブソンも別段大きな反応を見せず、ただ『そうか』と頷く。
少年の口ぶりがまるで表に出ない者の言い回しだった為、同じ匂いを感じたバショウも彼の存在が気になったが、先にメグミがのんきに前に出た。
「ミラーボが敵って事は、私達と一緒ね!私、メグミっていうの。よろしくね!えっと……」
「俺の名前はレオだ。訳あってミラーボを追っている」
レオと名乗る少年の足元にさっきのエーフィ達が擦り寄る。
「さっきは助けてくれてありがとう、エーフィ」
喉を指先でくすぐられるエーフィが、気持ち良さそうに目を細めて鳴く。
「レオはこの地方の事は詳しいのか?」
独特の服装などから、少なくとも自分達とは違う地方の出身や育ちだと考えて尋ねるアキラ。
「ああ。オーレについては何でも知っている」
「本当っ?じゃあアゲトビレッジも?」
「アゲト?まさかセレビィの事についてか?」
「!」
船でバショウから『ストレートにセレビィの事は口外するな』と促されていたメグミが遠回しに言ったにも関わらず、レオの方からセレビィの名が出され、彼女はいささか驚いた。
どう反応していいか分からず、困惑しつつバショウを見ると、今度は彼が相棒であるブソンに促すように視線を送る。
「……じゃあ話は早ぇな。ちょっと話を聞かせてもらおうか」
メグミとバショウの代わりにブソンが話を進める。
アキラはちょっと困ったようにそのやり取りを見届けていると、俄かに背中に重みを感じた。
「うわっ!な、何だ!?」
彼の背中に飛びついたのはレオのブラッキー。
主人であるレオも、ブラッキーの行動には驚いたように言った。
「俺のブラッキーが他のトレーナーに懐くなんて珍しいな」
彼もまた、出会ったばかりのアキラ達に興味を持ったようだ。
「こんな所で立ち話も何だし、まずはポケモン達を休ませよう。この先にポケモンセンターがあるからそこで話そう」
言われるがままにレオに案内され、彼に続く4人。
果たして、メグミ達にリベンジを誓うミラーボの正体、そして彼の持つダークポケモンとは何なのか。
その鍵を握る少年、レオとの出会いが全てを大きく動かす。
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