「シャドーって事は……お前ら、ミラーボの仲間だな!?」
「ピンポンピンポン!大正解~!そんな君には……」
緑服の男がアキラを指差すと、別の場所に潜んでいたコノハナが溜めたエネルギーを放ってきた。
「ヘキル様からのプレゼント、鎌鼬を喰らえ!!」
「!」
バイクから飛び降りて攻撃を避けるアキラ。
「ちょっと!そんな所にいないで降りて来なさいよ!」
「やなこった!俺達は人を見下すのが好きだからな!」
メグミの言葉に耳を貸そうともしない6人に対し、行動を起こしたのは意外にもバショウ。
モンスターボールを手にすると、他の皆にバイクから降りるように指示を出す。
そんな彼が持つボールの色は……。
「赤……って事は……」
バショウが持つ2つのボールの内、ソプラじゃないポケモンのボール。
中のポケモンを断定したメグミとブソンは同じように顔を引きつらせる。
「ハガネール、捨て身タックル!」
投げたボールから現れた巨大な鉄蛇は、迷う事なく6人組に向かって猛突進。
やっぱり……と、ブソン達は苦笑しか出来ない。
悲鳴の後には岩場が破壊された音が響き、バショウだけがその様子を毅然とした態度で見ていた。
あのバショウをこんな行動に移した原因は、彼らの「見下す」という発言だ。
「バショウもプライド高ェからなぁ……。お前らも気をつけねぇと“ああ”なるぜ」
「はい。気をつけマス」
メグミとアキラの強張った声が重なる。
しかし6人組は崩れた瓦礫から次々と起き上がって来た。
「うぬぬ~っ……!よくもやりやがったなぁ〜っ!」
「こうなったらポケモンバトルだ!!編隊を組むぞ!」
「おうっ!」
「……あの攻撃を受けても平然としてるなんて……タフな奴らだな」
怯む様子のない6人組にレオも呆れて言った。
そして6人組は2人ずつの3組に分かれると、オレンジ色の男がボールを投げる。
「ヤジロン!岩石封じ!!」
土偶ポケモンのヤジロンが体をスピンさせると、砕かれた岩が浮かんでメグミ達を目がけて落下してきた。
攻撃を身軽に交わすバショウとレオ。
動揺しながら逃げるアキラとメグミ。
ブソンは相手の動きを読むように睨みながら交わし続ける。
「フッフッフ。これで舞台は完成だ」
攻撃が止んで舞い上がった砂煙が治まると、岩石封じで出来た岩壁のせいでアキラとレオ、バショウとブソン、そしてメグミ1人に分断されてしまった。
「2対2のバトルに持ち込むのが狙いだったか……!」
相手のペースに嵌められたレオが悔しそうに言うと、隣のスペースにいたメグミが悲鳴のような声を上げる。
「嘘ーっ!?私1人なんだけどーっ!?」
そんな彼女の前には、容赦なく2人の男が肩を並べて立っている。
メグミもポケモンを2体出せばいい話だが、断然不利な状況だ。
不安がる彼女をじりじりと追い込む男達は、ボールを手にいやらしく笑う。
後退するメグミの背中にいびつな岩肌がぶつかると、ハッと2人組を見た。
「へへへ……。もう逃げられないぜ~」
恐怖はないが、状況に動揺してバトルに出すポケモンが決まらず、何度もベルトのボールを探ってしまう。
もう距離は3メートルもない。
「俺達に逆らうとどうなるか……教えてやるぜっ!!」
「っ……!」
目をつぶるメグミが最後に見たのは、自分に向かって走り出した男達の姿だった。
―――……ところが。
「ぶえっ!?」
「……えっ?」
次に聞こえたのは、攻撃をしてこようとしたはずの男達の間抜けな声だった。
不思議に思ったメグミが恐る恐る目を開くと、そこには俯せになって2人が仲良く倒れていた。
「な、なんで……?」
自分はポケモンを出してないし、仲間の援護があった様子もない。
なら誰が───と、そう思ったのはメグミだけでなく、攻撃を受けたシャドーの戦闘員もだ。
「だ、誰だぁ!?」
顔を押さえて起き上がる男と一緒にメグミも顔を上げると、答えになる存在がそこにいた。
長い耳、茶色の小さな体にふわふわとした尻尾の愛らしい姿の進化ポケモン、イーブイと赤茶色の髪の少年が堂々と立っていた。
少年もレオと同じように左腕には何かのマシンを装備している。
「ま、またお前かちびっ子!いっつも俺達の邪魔ばっかりしやがって!!」
「子供は大人しく家に帰れって何度も言ってるだろ!!」
男達の言葉にムッとした少年は口をへの字に曲げた。
「そっちこそ!僕は“お前”じゃなくてリュウトって名前があるって何回も言ってるだろ!」
「んな事いちいち覚えてられるか!邪魔するならまずはお前から……!!」
「イーブイ!!」
リュウトと名乗る少年がパートナーを呼ぶと、イーブイは掴みかかろうとした男達にアイアンテールと噛みつく攻撃を喰らわせる。
「お姉さん!こっち!」
敵が怯んでる間、少年は隙を見てメグミの手を取って駆け出した。
驚いたメグミは頭1つ低い背の少年に尋ねる。
「き、君は一体……!?」
「僕はリュウト。取り敢えず、まずはこいつらを倒してから話すよ!」
彼は幼さを残す瞳を男達に向けてそう言った。
エンジントラブルが原因で偶然出会ったトレーナー、ダツラ。
突然現れたシャドーの戦闘員と少年リュウト。
この出会いは必然なのか……?
そしてメグミ達はアゲトビレッジに辿り着けるのか……?
戦いは今、始まったばかり……。
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