「……了解しました。ハガネール、戻りなさい」
連絡を受けたバショウは自分が優位な立場であるバトルにも関わらず、ハガネールをボールに戻した。
「どうした!もう終わりか!?」
「ええ、終わりましたよ。……向こうがね」
「何……!?」
バショウの隣に別の人影が現れる。
「この通り、嬢ちゃんはいただいて行くぜ」
ブソンは気絶したメグミを抱えて勝ち誇ったように言った。
「メグミ!?」
(仲間がいたのか……!!)
「勘違いしていたようですが、君が私の足止めをしたのではありません。私が君の足止めをしていたんですよ」
「このっ……!!」
アキラは手持ちのポケモンを全部出して一斉攻撃を命令しようとするが、ブソンがそれを止めた。
「やめとけ。破壊光線だの大技やれば、嬢ちゃんも巻き添えだぞ」
「ブソン、これ以上は無駄です。基地へ戻りましょう」
バショウは胸ポケットから取り出したリモコンのスイッチを押した。
「ヘッ。お前は相変わらず真面目だな、バショウ」
「行かせるかぁ!くっ……!」
隠されていたヘリのプロペラで煙が巻き上がり、アキラの視界は塞がれてしまう。
「じゃあな王子サマ。次会う時には、もっと強くなってろよ」
その言葉を最後にロケット団は姿を消した。
「メグ……!!」
しかし彼女に伸ばした手は虚しく空を斬った。
飛び立つヘリをただ見つめる事しかできず、霧が晴れる森に取り残されたアキラは膝から崩れ落ちる。
「くっ……そぉっ……!!」
悲しそうに主人を見つめるサンドやケンタロス達。
アキラは地面にその怒りと悔しさをぶつけた。
何度も何度も、拳が切れるまで……。
それから数時間後、ポケモンGメン本部に連絡が入った。
「たった今事件の通報があった。場所はレッドコア山脈。少女が1人、ロケット団に連れ去られた。少女の名は……」
「メグミ……ですか?」
集められた人だかりから一歩前に出て言ったのは赤髪の青年だった。
「でしたらこの任務、自分にやらせて下さい」
「しかし……この程度の任務で君を出動させる訳には……」
「お願いします。これは俺がやらなければいけないんです」
真っ直ぐな瞳で頭を下げられた上司はしばらく考えた。
「……分かった。ではこの事件は君に任せよう。他の者は通常業務に当たってくれ」
「ありがとうございます」
「頼んだぞ。……彼女が無事だといいな」
真剣な眼差しで頷く青年はマントを翻して部屋を出て行った。
(メグミが攫われたとなると、ロケット団の幹部……それか隊長クラスが動いたか……)
外で青年を待っていたドラゴンポケモンのカイリューは彼に背を向けて翼を広げた。
「行くぞカイリュー!!」
青年を乗せたカイリューは猛スピードで飛び立って行く。
向かうは激闘の繰り広げられた山脈、レッドコア。
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