――ジャマだな。
ぼくが御剣と過ごした時間よりも長く傍にいる刑事が、邪魔で邪魔で、憎くて憎くて、腹立たしい。
こんなにも居心地が悪くて、体調も悪くなりそうなムカつき。何がキッカケなんだろう? ただ偶然、被告人に会った帰りに御剣とイトノコさんに会っただけだと言うのにさ。
「お前、被告人に会ったのか?」
前のお前じゃ考えられない行動だよ。被告人はすべて有罪にするのが信条だかルールだか決まりだか‥‥そう言ってたろ。
‥‥でも分かってる。変えたのはぼくだ。今の御剣にしたのは、このぼくなんだ。知ってる。分かってるよ。だから聞いてるんだ。予測や推測じゃない確信を得たいから。ほらね、って思いたいんだよ。
なのに、さ。
「キミに教えられたからな。」
そう答えたきみを見る為に向けた視界の中にはあの刑事もいて。御剣を見たいのに。御剣だけを見ていたいのに。赤以外の、余計な色が混ざってくるんだよ。
「❝警察❞が調べたことがすべてじゃない、って?」
我ながら驚くほどの毒舌だと思う。近くに、初動捜査に関わり、かつ逮捕までいたる刑事がいるにも関わらず、よく言えたもんだよ。でも、構わない。御剣にはぼくが必要で重要な位置にいるということを分からせてやるんだ。――この、バカで愚かな刑事に。見せつけてやる。
「そうではない。話を聞かなければ見えて来ないモノがあると気付けた、ということだ。」
‥‥満足出来ないよ、そんな答えじゃ。
ぼくのおかげで変わったのは事実だけれど、今きみはイトノコさんを確かにかばった。その人が持ってくる証拠を信じているっていうのか‥‥? いつからそんなに周りを見るようになったんだよ、御剣。
「‥‥成歩堂。さっきの言い方は、いくら糸鋸刑事でも傷つくぞ。」
ぼくの心はキズなんてレベルじゃない。視界に映る刑事を見る度に、何か大切なものが壊れていってる気がしてるんだよ。
「イヤ、‥‥その‥‥、誤認逮捕があることも‥‥じ、事実ッスから。」
ははは、と乾いた笑いをするイトノコ刑事にぼくはやっぱり、ムカついた。こっちはわざとヘコませる言葉をぶつけたのに、このオトナな対応。同じ土俵に立てていないような、焦燥感と苛立ちはなんなんだろう。しかしだな、と言い出した御剣とそれを聞く刑事をぼくは、ぼーっと霧がかかったような頭でただ見ていた。
「ところでさ、御剣‥‥。」
――やっぱり、ジャマだな。なんて、思いながら。